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第16回 文藝マガジン文戯杯「秋の味覚」
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秋と父
 投稿時刻 : 2021.08.22 23:40
 字数 : 828
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秋と父
ひやとい


 北海道札幌の出身なので、実家にいた時は、野幌近郊まで車で一時間がとこで行ける。もとも運転は出来ない。
 小学生時分、秋になるとなぜか父に車に乗せられては、その野幌の原野に連れていかれた。そこで何をするかと言うと、父が秋の味覚を採集するのを、ただ見ているというだけのことだた。主に背丈ほどもあるフキと、ラクヨウ、つまりハナイグチを採ていた。
 たぶん採集させられたこともあるはずなのだが、どう記憶をたどても一向に思い出せない。ただ父が採集してるのをぼーと見ていたり、忙しくしているのを尻目に勝手に遊びまわてたりしていたのだとしか、今のところは思えない。とするとわざわざ子供を連れて行ているのに何もさせずにいるのだから、ある意味奇特だとは言える。もしかすると万が一のことがあた際の保険として連れて行かれたのかもしれないが、ケータイなんかが出来るはるか昔の事でもあるし、周りに危険を知らせるようなそんな知恵はなかた。ただの阿呆な子供では自動車すら動かせない。発煙筒もつけたことがない。つまり何も役に立ちはしないはずだ。まあ常識的に考えて、単純に、そばに子供がいてくれれば、父としてはそれでよかたのだろう。
 ところでフキは煮つけとして食べたりも出来るが、ラクヨウは、家では父しか食べないようなものだた。父はこのラクヨウがことのほか好きで、瓶詰にして漬物のように保存しては酒の肴にしていたものだた。たまに瓶から出して食べているのを見ていると、なんだかヌメヌメしていて、どう見ても気持ち悪いものにしか思えず、ついぞ手は出さなかた。子供の頃はそれなりに偏食があて、メロンや梅干しも食べられなかたので、黄色いスライムめいた得体のしれないものを好む気持ちにはならなかた。
 これを書いているのは八月だが、来月いよいよ帰郷するので、高齢であるし、その際にこの話も含めていろいろ話してみようと思う。もともコロナ禍なので、家に入れてくれるかどうかわからないが。

 
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