第64回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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おまえは永遠に寝ていればいいさ
投稿時刻 : 2021.08.21 23:49
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おまえは永遠に寝ていればいいさ
犬子蓮木


 ドラえもん色の猫を撫でていた。
 撫でているとドラミちんの色に変わていた。
 いや、これは猫なのだろうか。犬のようにも思える。たしかだと思えることは4本足が地についていることと毛があること。バスケの試合をしていた。10mほどのハイジンプ、3階席にシトを決めれば4点もらえるのだ。
 夢の中なんてあやふやだ。
 わたしはずと夢の中にいる。
 夢は、夢だと気づいたときに起きて忘れるようなものだけど、もう何年、夢の中にいるのかわからない。どうしてわたしは目を覚まさないのか。鳩が海の中を飛んでいる。わたしも並走? 並飛びしている。その瞬間はおかしいと思わない。小学校の同級生と遊んでいる。隣には新卒の同期がいた。ボールを蹴てゴールを狙う。気づくと場面が変わていて、さきのはおかしかなたな、と気づく。夢だたんだて、もう何度も。夢は終わらない。繰り返し、新しい光景。懐かしい光景。
 夢は記憶の整理だという。このまま目覚めないでお片付けが済んだらどうなるのか。真白な世界。
 彼がいた。笑ていた。
 誰だたか。大切な人だた気がする。
 分厚い本を読めと言ている。わたしはそんなの無理だよと答えた。だて百科事典みたい。
 もう死んでしまた人だ。
 ふりかえると本はなかた。
 ひとり海辺を歩いている。夜の街。繁華街。喧騒。わたしは人に刺された。波の音。夕焼け。血が流れる。鳥が地面に降りてゴミ袋をつついている。鬼のような形相の男だ。わたしは刺されたあとも、くりかえし殴られた。
 ああ、だからわたしはずと眠ているのか。
 きと意識が戻らないまま病院のベドで眠ているのだ。
 本を持ている彼が笑顔をみせて言た。
「ありがとう」
 なにが? 思たけど声はでない。まあ、お礼を言われるぐらいのことをしたのだ誇ていいのだろう。
「ふざけるな! 殺してやる! よくもやりやがたな!」
 わたしを刺した男の声。
 ドラえもんの色をした猫が横切る。
 わたしは手にしたナイフを見つめる。赤。
 わたしは笑た。
 それから刺された。殴られた。
 ああ、そうか、わたしから刺して、そのあとナイフを奪われてやり返されたんだ。
 わたしの大切な人を追い詰めたこの男を殺そうとしたのだ。
 片付けの時間が終わる。
 天井が見える。白い。
 ここはきと夢ではない。だてまるで心地よくない。
 看護師がやてきた。医者がやてきた。刑事がやてきた。
 そうしてわたしは勝ち誇て笑た。                        <了>
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