てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第64回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
〔
1
〕
…
〔
6
〕
〔
7
〕
«
〔 作品8 〕
»
〔
9
〕
ねじりまわしの怪
(
多千花香華子
)
投稿時刻 : 2021.08.22 14:19
字数 : 1000
1
2
3
4
5
投票しない
感想:2
ログインして投票
ねじりまわしの怪
多千花香華子
これは夢か。
なにもない白い部屋だ
っ
た。
俺は立ちつくし、目の前に女がいる。
髪の長い女が、青くう
っ
血した顔で微笑んでいた。首がねじれている。
女の首の下には肩甲骨の膨らみがあり、それは背中だ
っ
た。さらに下には尻の双丘がある。つま先は向こうがわ。顔はこちらを向いているが、白いワンピー
スの包まれた体は、前後が逆だ
っ
た。
女はニタニタ笑
っ
ていた。
「問題。どうしてわたしはこんなふうにな
っ
ち
ゃ
っ
たでし
ょ
う」
しわがれ声だ
っ
た。
俺はわけもわからず呆然としていた。体が縛られたように動けない。女が言
っ
た。
「答えて」
俺は適当に言
っ
てみた。
「巨人にねじられた?」
「はずれ」
「う
っ
!」
俺の顔は子供のような小さい手に挟まれて、右にねじられた。すごい力だ
っ
た。抗えない。俺が答えられなければ、女同様に首を逆向きにされてしまうのだろう。恐怖が発火して体に広がる。
女はぎくし
ゃ
くした動きで、俺の視界に入るよう移動してきた。
「答えて」
「機械だ! 回転する機械に巻きこまれたんだ!」
「はずれ」
子供の手が俺の頭をねじる。体は万力で締め付けられたように前を向いたまま。これ以上はもう俺の首はまわらない。首の筋がキチキチと悲鳴をあげている。女は言
っ
た。
「答えて」
俺の顔を押さえる手に力がこめられた。もう時間がない。俺はなんとか理屈をひねりだした。
「バイクだ! バイク事故でそうな
っ
たんだ!」
女はポキポキと乾いた音をたてながら首をかしげた。
「どうしてそう思
っ
たの
ぅ
?」
「バイクに乗
っ
ていて投げ出された。そのあと首から着地したが、体の勢いは止まらなか
っ
た。だから首を視点にして体が回転したんだ!」
女は無情に告げる。
「はずれ」
「やめろ!」
俺の首は限界を超えてねじられた。自分でもなにをい
っ
てるかわからない悲鳴があがる。そして激痛とともにボキリと、首の骨が折れた。暗闇。
「は
っ
!」
俺は痛みで目が覚めた。生きている。痛みは幻だ
っ
た。
蒸し暑い真夏の夜の夢にした
っ
て夢見が悪すぎる。
荒い息をついていると少しずつ体の感覚が戻
っ
てきた。俺は安堵の吐息をついて寝返りをうつ。
その目の前に女の顔があ
っ
た。
女はう
っ
血した顔でうつろに笑
っ
た。
首はねじれて逆向きのまま。それだけじ
ゃ
なく、今度は両腕と両足もねじれて逆向きにな
っ
ていた。差し込む日差しが悪夢のように女を体をまだらに染める。
女は待ちきれないというように、虫の動きで床を這いながら言
っ
た。
「それでは
ぁ
、第二問で
ぇ
す」
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感想:2
ログインして投票