てきすとぽい
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第68回 てきすとぽい杯
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〔 作品6 〕
Chill Out
(
ポキール尻ピッタン
)
投稿時刻 : 2022.04.17 00:40
字数 : 753
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Chill Out
ポキール尻ピッタン
先月まで入居者がいたはずの古いアパー
トはいつのまにか取り壊されていて、商業ビルが並ぶ駅前通りは虫歯でも抜いたみたいにぽ
っ
かりと隙間ができていた。金属パイプと白いパネルを積んだトラ
ッ
クが一方通行をバ
ッ
クで商店街に侵入し、ヘルメ
ッ
トを被
っ
た作業員たちが空き地の前に三角コー
ンを並べ始めた。エンジン音の唸りに合わせてマフラー
から黒い排気が一定のリズムで吹き出し、建材を下ろしたトラ
ッ
クは誘導に沿
っ
てゆ
っ
くり進み始めた。商店街の出口を遮るように四両編成の電車が駅を発車した。線路がこすれる音とモー
ター
音がトラ
ッ
クの低い排気音と重なり、
頭の中でKLFの「Chill
Out」が流れ始めた。
「落ち着け、落ち着け」
瞬きもせずに睨みつけるミチルの視線をコー
ヒー
カ
ッ
プで遮り、商店街へ顔を背けて呟いた。熱を帯びたカ
ッ
プに触れた唇がわずかに焼かれ、思わず顰めてしま
っ
た表情が気に触
っ
たのだろう。ミチルは隣の席の子どもが振り返るほど大きくため息をついた。
いい大人がロ
ッ
テリアで別れ話をしているなんて実に滑稽だ。
「私が大声を出さないと思
っ
て、」
二の句が継げぬくらい呆れているのだろう。ミチルは言葉を振り払うみたいに首を振
っ
てステ
ィ
ッ
クシ
ュ
ガー
を二本、カフ
ェ
ラテに降り注いだ。ミルクに弾かれた幾粒かの砂糖がカ
ッ
プを飛び出しトレイに散
っ
ていた。
金属が石とぶつかる音だろうか、二メー
トルほどの間隔で並んだ作業員たちがハンマー
を振り下ろすたびに甲高い音が空き地に響いていた。なにが建つのだろうか? それとも以前のアパー
トが復元されるのだろうか? しばしありえない想像に頭を巡らせていた。
「少し、考えさせて」
当たり前の日常だ
っ
たと思う。街の景色に溶け込んでいた二人だ
っ
たと思う。
「あなたも悪いんだからね」
壊したのは誰なのか、もちろん分か
っ
ている。
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