てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第69回 てきすとぽい杯
〔
1
〕
〔
2
〕
«
〔 作品3 〕
こゆりちゃん
(
住谷 ねこ
)
投稿時刻 : 2022.06.18 23:38
字数 : 667
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票
こゆりちゃん
住谷 ねこ
こゆりち
ゃ
んちの皿は、皿同士が当たると、かばらかばらという音がする。
ち
ょ
っ
と厚手の陶器の音。
おばあち
ゃ
んのうちの庭に建つ小さなフレハブ小屋に今月から住むことにな
っ
たこゆりち
ゃ
んは
絵を描く学校の学生さんだ。
私のうちは両親が共働きなので学校帰りは家には戻らずま
っ
すぐおばあち
ゃ
んちへ行く。
毎日行くうちにこゆりち
ゃ
んも毎日プレハブ小屋で絵を描いているので仲良くな
っ
た。
「このお皿、欠けてるよ」
「それはね、アンテ
ィ
ー
クの皿よ。たいてい欠けているのよ」
こゆりち
ゃ
んは実は、ここに来る前、フランスに留学していて向こうで
こういう古い皿やカ
ッ
プを買うことに夢中にな
っ
てお金が無くな
っ
ち
ゃ
っ
たらしい。
でも日本でこういうフランスの古い食器が高く売れると聞いてそれを売
っ
てまたフランスに戻ろうと山ほどの皿やカ
ッ
プやツボなんかを持
っ
て帰
っ
てきたのだ。
一番の思い出は何かと聞くと
絵を描く手を止めてしばらくぼんやりと天井を見つめていたが
鳩をね。食べたことかな。
自分でさばいてね。
オー
ブンで焼くのよね。
「鳩
っ
て食べれるの?」
「まあ、鳥だからね。鳥だよ普通に」
「お皿売れた?」
「まあまあ」
「じ
ゃ
あ、またフランスに行
っ
ち
ゃ
う?」
こゆりち
ゃ
んがいなくな
っ
たらち
ょ
っ
とつまらないな。と思
っ
て探りを入れてみた。
「うー
ん。どうかな。こ
っ
ちにも鳩はたくさんいるしね」
「
……
え?
……
」
「いや。うん。まあ全部売れたら。お金たま
っ
たらね。また行くかもね」
かばらかばらの皿に盛りつけた唐揚げ。
「唐揚げ、好き?」
「うん。好き」あれ? えー
と。
「こゆりち
ゃ
ん。鳩じ
ゃ
ないよね、これ」
「鳥だよ」
←
前の作品へ
次の作品へ →
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票