第70回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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ドドドドンブッブーのガチャガチャクルクル
投稿時刻 : 2022.08.14 01:55
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ドドドドンブッブーのガチャガチャクルクル
犬子蓮木


「おかえりなさいませ、ご主人さま」
 メイド服のゴールデンレトリーバーが言う。
 崖の道が2つ伸びていて片方に人がガヤガヤと並んでいた。
「こちらへ。向かいながら説明します」
 並ぶ人に見られつつ進む。
「あちらはリセマラ待機列です。ご主人さまには親ガチを引いて頂きます」
 振り子なしぽ。
「ここは生前世界です。ここで親ガチを引き、納得できたら赤子になります。できない場合はリセマラです。最近はリセマラを選ぶ方が多く運営に支障が出るため列をわけています」
 隣の崖を見る。
「昔は親ガチもありませんでした。大金持ち、性格の良い悪い、犯罪者、国、人種、千差万別です。貧しい国の王族と豊かな国の貧乏な家はどちらが幸せでしう? お金持ちでも悪人は捕まるかもしれない。どんな家庭が幸福かは他人に選べませんし、生まれは子供の努力でどうにもできません」
 僕らは歩いていく。
「そこで!」ゴールデンレトリーバーが振り向く。輝く目。「親ガチが実装されました。仕事は増えましたけどよりよい世界へメイドとして働けるのはうれしいです」
 しぽがすごく振られている。
 モニターの前についた。
「では親ガチをどうぞ」
 レバーを引く。画面がまわる。

 ドドドドン!!

 決またらしい。続いてブザー音。

 ブブー

「ハズレだ」「よ
 リセマラ列からうれしげな声。
「SSR以外ですとハズレの音が鳴ります」
 ゴールデンレトリーバーが画面に近づく。
「あ、でも悪くないですよ。SRです。先進国下位30%ぐらいの家庭です。より詳細なデータはこちらで確認できます」
「見なくていい」
「リセマラですか?」
「違う。どんな家でも僕は精一杯生きていく」
「そうですか。まあSRですからね。全然、悪くないです。ではよき人生を」
 メイド服のゴールデンレトリーバーがバイバイと右前足を動かしていた。
「いてらいませ」


   §


 夫婦が赤子の映る画面を見ている。
「知能のステが低い。受験きびしそう」
「運動は並。優れたスキルなし」
「性格はすごくいいみたい」
「それだけだ。やぱりRか」
 夫婦がステータス画面を見ている。
「どうされますか?」と白衣のシベリアンハスキー
「リセトで」
「もうハズレのチクやめない?」
「SSRなんてそうそう来ないぞ、使い方次第でいいスキルを持てるかもしれないし」
「ブブーて頭でずと鳴てる」
「がんばろう、生まれてくる子供のためだ」


   §


「おかえりなさいませ、ご主人さま」
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