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第70回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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ズルズル
 投稿時刻 : 2022.08.13 22:50
 字数 : 1000
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ズルズル
浅黄幻影


 そのラーメン屋「地獄で天使」は私の愛する店で、なかなか他には見られないものだ。
 メニはいろいろあるが推しは味噌だ。お気入りは青海苔が振られているところで、だし汁や味噌、各種の調味料に海苔の強い個性が加わるので特徴的。うま味という言葉はこのためにあるといても過言ではないだろう。
 この味噌ラーメンは辛さを選べる。零五辛まで六段階だ。だが本当に地獄を味わうような辛さは五辛だけで、あとはうま味を味わいながら辛さを楽しめる範囲に収まている。この店の辛味噌ラーメンを食べるのならば、まずは一辛あたりから。おすすめは三四だ。
 最近、私は逆流性食道炎やら胃部レントゲンで慢性胃炎らしいと告げられたりもしたのだが……次に医者に行くまでは普通に食べることにしよう。大丈夫、胃もたれと胃酸過多でげぷが酸ぱいのと、消化が悪くて三時間後にも素麺が残ているのと、そんなのが数年続いてるだけだから。大丈夫、大丈夫。
 店員のお姉さんが可愛いのも売りである。店主の娘さんが看板娘「天使」を勤めている。
 この「天使」の名前が粋でいい。当初は本当に激辛だけが売りで名前も「閻魔」だた。各地の激辛大好きの舌を焼き尽くしたという逸話もある。何とも唾液がこみ上げる話で、一度くらい味わいたかたとも思うが、あまり美味しくなかたとも聞いている。やはり辛味はうま味と合わさてのもの。ただ辛いだけで満足しているのなら、舌に針でも刺した方がいいだろう。
 その経営方針が変わたのが天使が降臨してからで、味も経営も一気に上手い方向へと変わていた。おかげで私も腹の肉を肥やすことが出来ている。ナイス、天使!
 味について文句をつけるところは、まさかここまで語たのにあるわけもない。しかし一点、悲しいことがある。ラーメンが熱すぎるのだ。
 いや、私もラーメン通のつもりだ。ラーメンが熱いくらいなんだというのか。違うのだ。ラーメンが熱いのならば、どんぶりだて熱い。なのにこの店では、あの天使に、ラーメンをお盆に載せずに手で持たせて運ばせている。両手でしかり……。なんという閻魔の所業だろう。
 正直に言うと、私はそんな光景を見ていられないのだ。これほど一流の店なのに、胸が痛くて(慢性胃炎ではなく)たまらない。それでも、私はこのラーメンをあきらめられず、食べに来てしまう。抜けられずに、ズルズルと。ラーメンだけに、ズルズルと。
 ☆5、おすすめです。
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