客観的は恋の邪魔もの
とある大型本屋にて、、、
本棚の、ふと目についたタイトルの昔読んだことがある小説に手を伸ばす。
目当ての本を取り出そうとした刹那、隣から伸びてきた白い指先に手が触れる。
ドキ
ッ、びっくりして思わず手を引っ込め隣に目をやると、同じように驚いて身をすくめた彼女がいた。
その姿をひと目見たときトクンと胸に音がして、それが恋の始まりだと後から気がついた。
「どうぞ」と僕が言うと、「いえ、どうぞ」とかわいくはにかむ彼女。
「昔読んだことがあるからいいんです」と僕。
「私もです……、でも友達に貸したまま返ってこなくて」と照れたような苦笑いもかわいい。
「じゃあ、同じ作者の〇〇も読んだことあるかな?」
「ええ、あれ面白いですよね」
「だよねー、じゃあ□□は読んだ?」
「いいえ、気になってたんですけどまだ読んだことなくて……、面白いですか」
「面白いよ、すっと入り込めて、二人のすれ違いにハラハラするんだけど、クライマックスが独創的で、清涼な読後感なんだよね」
「いいですねえ。興味湧いてきました」
「他にも幾つかあるんだけど、紹介しようか?」
「ぜひ~♡」
そんなこんなでボクら二人は喫茶コーナーに移動した。
「ボクさんって面白い人なんですね」と崩れるように笑う彼女。表情が豊かだ。
「そうかなあ?」と高揚するボク。
「それにイケメンだし」と伏し目がちにつぶやかれる。
「それ冗談でしょ。そんなこと言われたのはじめてだよ」ボクは頬が赤くなる。
「全然本気ですよ」彼女も耳を真っ赤にしながらまっすぐボクを見つめて言う。
ボクは意を決して言う。
「じゃあボクも言っちゃうけど、こんな風にぐいぐい来られるの好きなんだ。運命の出会いかも」
「ですね」弾けた笑顔で彼女もそう言ってくれた。
、、、という妄想をしてたら、周りの白い目に気がついた。
ボクはセクシーアイドル写真集の棚の前に小一時間、ニヤニヤしながら立ち尽くしていたのだった。