第72回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
 1 «〔 作品2 〕» 3 
客観的は恋の邪魔もの
投稿時刻 : 2022.12.10 23:22
字数 : 785
5
投票しない
客観的は恋の邪魔もの
合高なな央


 とある大型本屋にて、、、

 本棚の、ふと目についたタイトルの昔読んだことがある小説に手を伸ばす。
 目当ての本を取り出そうとした刹那、隣から伸びてきた白い指先に手が触れる。

 ドキ、びくりして思わず手を引込め隣に目をやると、同じように驚いて身をすくめた彼女がいた。
 その姿をひと目見たときトクンと胸に音がして、それが恋の始まりだと後から気がついた。

「どうぞ」と僕が言うと、「いえ、どうぞ」とかわいくはにかむ彼女。
「昔読んだことがあるからいいんです」と僕。
「私もです……、でも友達に貸したまま返てこなくて」と照れたような苦笑いもかわいい。
「じあ、同じ作者の〇〇も読んだことあるかな?」
「ええ、あれ面白いですよね」
「だよねー、じあ□□は読んだ?」
「いいえ、気になてたんですけどまだ読んだことなくて……、面白いですか」
「面白いよ、すと入り込めて、二人のすれ違いにハラハラするんだけど、クライマクスが独創的で、清涼な読後感なんだよね」
「いいですねえ。興味湧いてきました」
「他にも幾つかあるんだけど、紹介しようか?」
「ぜひ♡」

 そんなこんなでボクら二人は喫茶コーナーに移動した。

「ボクさんて面白い人なんですね」と崩れるように笑う彼女。表情が豊かだ。
「そうかなあ?」と高揚するボク。
「それにイケメンだし」と伏し目がちにつぶやかれる。
「それ冗談でし。そんなこと言われたのはじめてだよ」ボクは頬が赤くなる。
「全然本気ですよ」彼女も耳を真赤にしながらますぐボクを見つめて言う。
 ボクは意を決して言う。
「じあボクも言うけど、こんな風にぐいぐい来られるの好きなんだ。運命の出会いかも」
「ですね」弾けた笑顔で彼女もそう言てくれた。


 、、、という妄想をしてたら、周りの白い目に気がついた。
 ボクはセクシーアイドル写真集の棚の前に小一時間、ニヤニヤしながら立ち尽くしていたのだた。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない