第73回 てきすとぽい杯
 1  2  3 «〔 作品4 〕» 5 
カメオ? うんぼく知ってるよ!
投稿時刻 : 2023.02.18 23:32 最終更新 : 2023.02.18 23:40
字数 : 1490
5
投票しない
更新履歴
- 2023/02/18 23:40:41
- 2023/02/18 23:32:35
カメオ? うんぼく知ってるよ!
ゲームスキー


 あ、あ、あんぱんまーんみーんなのたーめーにー
 あーいーとー、ゆうきだけーがとーもだちさー
ぼくは今日も歌を歌いながらツターをしていた。歌てると後ろから後頭部に軽い衝撃があてヤクザみたいなが声がする。
「オイてめカバオじてんだろ!」
 いたたた。kittyさんは足グセが悪い。

 ぼくは違う歌を歌うことにした。どうして考えてることが分かたのか不思議だけど、kittyさんはなんでも知てるんだ。
 またでたまたきたおかめかめー
 ホンマに美味い。おかーめかめかめおかめなとー
「あははは、なんで関西版なの? だいたいキミ納豆食べられないじん」
 今度は甲高い笑い声がして、後ろを見ると美鈴がお腹を押さえて楽しそうにしてる。
「おかめじなくてカメオでし?」
 美鈴はぼくの布団の端にあた枕を背もたれにして、窓枠の柱に寄りかかてるんだと思たけどよく見たら枕じなくて美月だた。いつもの冷たいバカにしたような声が少し柔らかいのは、美鈴が笑てるからだろう。
「ああ、カメオというのは装飾品だね。浮き彫りにした蓋のないペンダントのようなものを服に留めたりしているのを見たことがないかい?」
 ドアが開いて和則さんが入てくる。
ぼくの部屋なのに――、と喉まで出かけた声を遮て、ドアの後ろから更に乱暴な声が続く。
「まーたwikipediaですか和則さ―ん。そもそも部屋の前でスマホで検索してからボケるために暗記とかやめましよ、寒いし」
「オマエもネタ考えてたじね―かよww つかガメラじメしかあてね――
あ、ちす文章担当さ―ん。小説進んでる―?」
 美月がとたんに嫌な顔になて、美鈴を後ろから抱きしめたまま脇に寄せてカーテンを被せようとする。ゲーマーくんと友達の並木くんは、美月の天敵だ。
 でも、二人の顔を見るなり目を輝かせて口を開こうとしたけど今日はすぐに黙り込んだ。
ぼくの後ろの反対側に不穏な人物がいるのに気付いたからだ。
「カズパパ、変な人連れてこないでよー
 美鈴がカーテンの影から甘えた声を出し、ゲーマーくんが困たような顔をして、並木くんが口を開こうとして黙り込む。kittyさんが薄暗い笑顔でニヤリとしたのが分かり、和則さんが少しどもりながら挨拶をする。

 なんにしよう、なにを書こう。
「なんかもうチトGPTだけ? 大変みたいだね―」
 ゲーマーくんがスマホをこちにかざしておどけたように言い、目があただけで美月がツンと横を向き、並木くんが笑いだして背中のデイバグを床にドスンと置く。
「うい、とりまつまみ買てきましたー

 あれ1時間制限だけ?
まいか。とりあえずうたておこう。

 またでたまたきたおかめかめー
 ホンマに美味い。おかーめかめかめおかめなとー

あははは、あははは。
 なんだかわかんないけど酒盛りが始また。
今日は土曜日だ。
 6人が勝手にぼくの部屋で騒ぎ出してうるさくなたし、ノートに打ち込み終わてから風呂場に向かうとぼくはふと気がついた。
 鏡には疲れ切た顔の初老の男がいて、美月も美鈴も和則もいないじないか、と口を開いたのだ。
「何を言てるんだ?」
 ぼくは鏡に呟く。
きまで部屋にいたじないか。
「茶番だな。GPTでももう少し気の利いた話を考えるし、マシな落ちまでこんなに時間は掛からない」
ぼくは鏡を睨むと鏡の中の男の口が動いていないのを確認した。

 風呂に入ろう。そしてとりあえずもう一度歌ておこう。

 またでたまたきたおかめかめー
 ホンマに美味い。おかーめかめかめおかめなとー

土曜の夜だ。少しくらい騒いでも苦情なんか来ないさ。

終わり。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない