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第6回 てきすとぽい杯〈途中非公開〉
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恋する乙女はどこにでもいる
 投稿時刻 : 2013.06.15 23:44
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恋する乙女はどこにでもいる
永坂暖日


 わたし、奪衣婆(だつえば)! 三途の川で係員をしてるの。お仕事の内容は、渡し賃の徴収。三途の川の通行料は、みんな知てるよね。そう、六文! こんなはした金も用意できない貧乏人が来たら、渡し賃代わりに着ている服を剥ぎ取ることになてるの。お仕事だから、追い剥ぎじないから!
 名前に婆が付いてるけど、心は永遠に十七歳の女の子。ゆたり緩やかに流れる三途の川のほとりで、一応旦那の懸衣翁(けんえおう)と毎日お仕事に励んでるんだけど……わたしが追い剥ぎよろしく服を剥ぎ取るのが役目なら、懸衣翁はそれを木の枝に掛けて垂れ具合を見るのが役目。
 ねえ、何か仕事の配分、おかしくない? 普通、服を剥ぎ取るなんて力業、男の仕事でし
 それを懸衣翁に言ても「だて上役からそう割り振られたんだし。六文どころか服も着てないような変態チクな奴が来たら、生皮剥ぎ取る力仕事は俺だし」て全然相手にしてくれないの。頭に来るわー。マジであり得ないわー
 それにうかり気が付いちてからは、もー、夫婦生活なんてないも同然。だいたい何年連れ添たのかも分からないくらいだから、あんなの旦那どころか河原の石と同じよ。居ても居なくても困らないし、変わらないし。
 だから、だからね……たまーに、わたしたちの仕事ぶりを見に来る閻魔大王と、ちといけない関係になたのも仕方ないことなの。枯れ枝みたいなじじいより、嘘つきの舌を引こ抜く大王様の方がそりもう逞しいし男らしいのは当然で、心は十七歳の乙女なわたしの心がなびいちうのも無理のない話。
 でも大王様とのアバンチルは半年に一日だけ。忙しい大王様は、それだけしかお休みを取れないの。地獄てけこうなブラク企業ね。
 今度大王様にお会いできるのは一月後。ああ、早くその日が来ないかしら。待ち遠しいけれど、あと一月で愛しい大王様に会えると思えば、懸衣翁のしけた顔を見るのも多少は我慢できるの。多少はね。本当は今すぐにでも、懸衣翁の上に河原の石を積み上げたいけど。
 あら、誰か来るみたい。六文銭は持てるかしら。心は永遠の十七歳でも見た目は名前通りのマダムだから、力仕事は体に堪えるのよ。
 いつかこの川を渡るあなたも、わたしのためにちんと六文銭、用意しておいてね。
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