第79回 てきすとぽい杯
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殺された密室
投稿時刻 : 2026.06.13 23:30
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殺された密室
犬子蓮木


 ワープ装置が開発されたらしい。
 ニスでやていた。人を決また位置に転送できるとかなんとかで、仕組みはよくはわからないが、真面目なニス番組でやていたので、完全な嘘ではないのだろう。
 最近は、AIだスマホだネトだなんだ。よくわからないものばかりだ。もう少しおじさんにやさしい世界になてほしい。
 いや、そんなことを考えてる場合ではない。
 人が死んでいるのだ。
 真面目に考えろ。
 仕事をしろ。
 頭を振て気を取り直す。市民からの通報があり、刑事である俺は現場にやてきた。
 テレビのバラエテ番組で見るような透明で大きな立方体の箱があり、その中で人が倒れていた。ナイフが刺さていた。血液が広がて固まている。だいぶ時間がたているようだた。しかし、ニオイはしない。
 近づいて箱を叩く。分厚いアクリルか。ガラスではない。道具無しでは壊せそうもない。床まで壁と同じ素材で作られているようで、転がしたら、入口があるというわけでもないようだた。
 透明で大きなサイコロの中で、人が死んでいると言えば、わかりやすい。
 先に着いた警官たちが調べたが、箱に扉や窓はなかた。箱の上に登りもしたが、見当たらない。
 出入り口がない部屋で死んでいる。
 密室殺人というわけだ。
 もちろん、自殺の可能性もあるが。
 そうして、どういう方法が取られたのかを考えているわけだ。
 上の人間たちは、箱を壊していいか、どう壊せば証拠を破壊してしまわないか会議中だた。
 会議に呼ばれていない俺は、箱に向き合ている。
 昔から、いくつもの密室殺人を解決してきた。
 だから、今回もと上からは期待されている。

 ワープ装置が開発されたらしい。
 ニスで見た、開発者の顔が思い浮かぶ。
 白衣を着ていて、もじもじの白髪に分厚そうなメガネ。手塚治虫の漫画にでもでてきそうな、まさに博士、まさに科学者という感じの容姿で、ハイテンシンでしていた。
 あいつが犯人なんじ……
 
 違う。真面目に考えろ。
 まず思いつくのは、人を入れてから壁を接着する方法だ。だが、それは否定されている。通報はなかたが、この箱自体は、数日前からここに置かれていたらしいことは多くの人間に目撃されている。そのときは、死体も生きている人間も中に存在しなかたとのことだ。
 箱ごと入れ替えた可能性も否定されている。数日前に、箱に落書きをしたという人間がいるらしく、目撃された落書きは今も残ていた。一度、壊し、落書きされた壁を再利用するなどは考えられるが、どうも調べたところ、接着されたあたりに二度接着されたような跡はないらしい。
 箱を保たまま、人を入れる方法を考えなければならない。

 ワープ装置が開発されたらしい。
 ワープ装置が開発されたらしい。
 ワープ装置が開発されたらしい。

 やめろ。現実逃避するな。
 逆に考えてみる。人は、最初から入ていた。だが、見えないようにされていた。
 完全に密閉されているので、ニオイがない。死体を見つけない限り、死体があるとは思わない。たとえば、地面と同じ色のカバーがかけられていたら、気づかないかもしれない。色だけでなく、もと見にくくする工夫もできるだろう。
 そのカバーをどう回収するかという問題はある。
 熱で溶ける素材などはあるか。
 今日は日差しの強い日だた。
 ここ数日は、曇りで、涼しかた。
 やはり開けてみないとわからない。
 どうせこのままにしておけるわけではない。上の奴らはささと会議を終わらせろ。

 透明な壁を叩く。
 中の人間と目があた。
 死体ではない。
 壁を叩いたときに、ビクと動いた。
 知ている顔だ。
 ここ最近、知た顔だ。
 ニスで見た、科学者の顔だた。
 やべ、という顔。
 体が足元からすと消えていく。
「おい、逃げるな」
 壁を叩く。
 科学者が消えた。

 死んでいたのは、科学者の助手だた。
 箱をこじ開けて、身元を調べた。監視していたカメラに科学者が映ていたことで、科学者は指名手配されることになた。
 なんどもワープ装置で逃げられたが、いろいろあて、なんとか捕まえた。
 発明の権利だなんだで揉めたらしい。
 この箱は、ワープ装置の実験に使ていたもので、一時的に死体を置いたつもりだたと。人通りの少ないところだたので見つかているとは思わなかたとのことだた。
 つまり、密室殺人のトリクはワープ装置だた。
 
 ふざけるな。机に拳を打ち付ける。
 もう刑事やめようかな。
 だが、AIとかスマホとかネトとかワープ装置とかわからないおじさんにまともな仕事があるだろうか。
 ネトだなんだは、そういうのが専門の若者に任せておけばよかた。
 だが、人が直接ワープできるとなると、物理的な犯罪にも使われる可能性がいくらでもある。泥棒にも使えるし、暴力、逃げるのにも使える。今回は、まさにそんな事件だた。科学者を北海道で追い詰めたかと思たら、次は沖縄に現れた。長野でスキーをしていたかと思たら、鳥取の砂丘を歩いていた。
 なんでもありじないか。
「班長、事件が発生しました。また密室です!」
 楽しそうな若者がおもちをもらた犬のようにやてきた。
 ため息を吐く。
「もう密室なんてないさ」                      <了>
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