てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第79回 てきすとぽい杯
〔
1
〕
«
〔 作品2 〕
»
〔
3
〕
殺された密室
(
犬子蓮木
)
投稿時刻 : 2026.06.13 23:30
字数 : 2092
1
2
3
4
5
投票しない
感 想
ログインして投票
殺された密室
犬子蓮木
ワー
プ装置が開発されたらしい。
ニ
ュ
ー
スでや
っ
ていた。人を決ま
っ
た位置に転送できるとかなんとかで、仕組みはよくはわからないが、真面目なニ
ュ
ー
ス番組でやていたので、完全な嘘ではないのだろう。
最近は、AIだスマホだネ
ッ
トだなんだ。よくわからないものばかりだ。もう少しおじさんにやさしい世界にな
っ
てほしい。
いや、そんなことを考えてる場合ではない。
人が死んでいるのだ。
真面目に考えろ。
仕事をしろ。
頭を振
っ
て気を取り直す。市民からの通報があり、刑事である俺は現場にや
っ
てきた。
テレビのバラエテ
ィ
番組で見るような透明で大きな立方体の箱があり、その中で人が倒れていた。ナイフが刺さ
っ
ていた。血液が広が
っ
て固ま
っ
ている。だいぶ時間がた
っ
ているようだ
っ
た。しかし、ニオイはしない。
近づいて箱を叩く。分厚いアクリルか。ガラスではない。道具無しでは壊せそうもない。床まで壁と同じ素材で作られているようで、転がしたら、入口があるというわけでもないようだ
っ
た。
透明で大きなサイコロの中で、人が死んでいると言えば、わかりやすい。
先に着いた警官たちが調べたが、箱に扉や窓はなか
っ
た。箱の上に登りもしたが、見当たらない。
出入り口がない部屋で死んでいる。
密室殺人というわけだ。
もちろん、自殺の可能性もあるが。
そうして、どういう方法が取られたのかを考えているわけだ。
上の人間たちは、箱を壊していいか、どう壊せば証拠を破壊してしまわないか会議中だ
っ
た。
会議に呼ばれていない俺は、箱に向き合
っ
ている。
昔から、いくつもの密室殺人を解決してきた。
だから、今回もと上からは期待されている。
ワー
プ装置が開発されたらしい。
ニ
ュ
ー
スで見た、開発者の顔が思い浮かぶ。
白衣を着ていて、もじ
ゃ
もじ
ゃ
の白髪に分厚そうなメガネ。手塚治虫の漫画にでもでてきそうな、まさに博士、まさに科学者という感じの容姿で、ハイテンシ
ョ
ンでし
ゃ
べ
っ
ていた。
あいつが犯人なんじ
ゃ
……
。
違う。真面目に考えろ。
まず思いつくのは、人を入れてから壁を接着する方法だ。だが、それは否定されている。通報はなか
っ
たが、この箱自体は、数日前からここに置かれていたらしいことは多くの人間に目撃されている。そのときは、死体も生きている人間も中に存在しなか
っ
たとのことだ。
箱ごと入れ替えた可能性も否定されている。数日前に、箱に落書きをしたという人間がいるらしく、目撃された落書きは今も残
っ
ていた。一度、壊し、落書きされた壁を再利用するなどは考えられるが、どうも調べたところ、接着されたあたりに二度接着されたような跡はないらしい。
箱を保
っ
たまま、人を入れる方法を考えなければならない。
ワー
プ装置が開発されたらしい。
ワー
プ装置が開発されたらしい。
ワー
プ装置が開発されたらしい。
やめろ。現実逃避するな。
逆に考えてみる。人は、最初から入
っ
ていた。だが、見えないようにされていた。
完全に密閉されているので、ニオイがない。死体を見つけない限り、死体があるとは思わない。たとえば、地面と同じ色のカバー
がかけられていたら、気づかないかもしれない。色だけでなく、も
っ
と見にくくする工夫もできるだろう。
そのカバー
をどう回収するかという問題はある。
熱で溶ける素材などはあるか。
今日は日差しの強い日だ
っ
た。
ここ数日は、曇りで、涼しか
っ
た。
やはり開けてみないとわからない。
どうせこのままにしておけるわけではない。上の奴らはさ
っ
さと会議を終わらせろ。
透明な壁を叩く。
中の人間と目があ
っ
た。
死体ではない。
壁を叩いたときに、ビク
ッ
と動いた。
知
っ
ている顔だ。
ここ最近、知
っ
た顔だ。
ニ
ュ
ー
スで見た、科学者の顔だ
っ
た。
やべ
っ
、という顔。
体が足元からす
ぅ
ー
っ
と消えていく。
「おい、逃げるな」
壁を叩く。
科学者が消えた。
死んでいたのは、科学者の助手だ
っ
た。
箱をこじ開けて、身元を調べた。監視していたカメラに科学者が映
っ
ていたことで、科学者は指名手配されることにな
っ
た。
なんどもワー
プ装置で逃げられたが、いろいろあ
っ
て、なんとか捕まえた。
発明の権利だなんだで揉めたらしい。
この箱は、ワー
プ装置の実験に使
っ
ていたもので、一時的に死体を置いたつもりだ
っ
たと。人通りの少ないところだ
っ
たので見つか
っ
ているとは思わなか
っ
たとのことだ
っ
た。
つまり、密室殺人のトリ
ッ
クはワー
プ装置だ
っ
た。
ふざけるな。机に拳を打ち付ける。
もう刑事やめようかな。
だが、AIとかスマホとかネ
ッ
トとかワー
プ装置とかわからないおじさんにまともな仕事があるだろうか。
ネ
ッ
トだなんだは、そういうのが専門の若者に任せておけばよか
っ
た。
だが、人が直接ワー
プできるとなると、物理的な犯罪にも使われる可能性がいくらでもある。泥棒にも使えるし、暴力、逃げるのにも使える。今回は、まさにそんな事件だ
っ
た。科学者を北海道で追い詰めたかと思
っ
たら、次は沖縄に現れた。長野でスキー
をしていたかと思
っ
たら、鳥取の砂丘を歩いていた。
なんでもありじ
ゃ
ないか。
「班長、事件が発生しました。また密室です!」
楽しそうな若者がおもち
ゃ
をもら
っ
た犬のようにや
っ
てきた。
ため息を吐く。
「もう密室なんてないさ」 <了>
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感 想
ログインして投票