推敲バトル The First <後編>
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(改題)Uの刺激 Punk enainara Cake kueyo
投稿時刻 : 2013.07.29 20:41
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(改題)Uの刺激 Punk enainara Cake kueyo
伝説の企画屋しゃん


「さあ、ユーコくん!」
 店長マルヲの号令に、ユーコは気を引き締めた。
 ゆーこと聞かないユーコ。その二つ名に恥じることなく、ユーコは天邪鬼で知られる販売スタフだ。
 機嫌を損ねるとポテトチプスの袋を逆さに並べ、観たいドラマがあれば夕方の六時に『蛍の光』を流してしまう。
 が、いつもはそんな自由奔放ぶりに眉をしかめているマルヲも、その日だけは顔つきがちがていた。
 まるでブチとサンダンスのように、二人は親しげだ。
 仙台郊外の新興店、スーパー・マルヲの事務所内だた。
 決して広くない室内には、のぼりや什器といたセールスプロモーン用のツールが並べられている。
「いよいよですね、店長。ついにこの日が来ましたね」
 形のいい細い顎の前で、ぎと右手の拳を握ると、ユーコは気合のこもた眼差しをマルヲにを向けた。
 窓の外では隣接する公園の桜が艶やかに咲き ていたが、異様な熱気に包まれた事務所内は真夏のようだ。
「ついに? ついにだて、ユーコくん」
「はい。プロジクトPCT発動ですね。必ず地域の話題になると思いますよ、店長」
「いや、ついになどと言うのは、まだはやい。今日この日から、我々の伝説がはじまるのだよ、ユーコくん。当店の命運は、君にかかているんだ。さあさあ、共に小売業の新たな境地を拓こうではないか」
 景気づけの言葉に、合点です、とユーコは威勢よく応じたが、小売業の新たな境地にはさらさら興味がない。
 あえて言えば、純粋に利害が一致したのだ。大手をふて悪さができる。生きていて、これほど痛快なことはない。
「店の未来をかけた、一大イベントですね。不肖、ユーコ、いかせていただきます!」
 けけけ、と笑うとユーコは敬礼し、太陽よりもまぶしく目を輝かせた。 
 これだ、この目だ。
 一種の畏怖を抱きながらも、マルヲはそう思う。
 東北一の商業都市、仙台。その地での競争は激化をきわめ、教科書通りのサービスでは、生き残りつづけることは困難だ。
 ともかく話題性がほしかた。そこで注目したものがある。店で悪さをしている時のユーコの無邪気な瞳。これほどの存在感を放つものは、東北では平泉の黄金堂くらいだろう。
 ユーコとの出会いが、マルヲの商才を刺激したと言てもいい。
 客に媚びない。
 このコンセプトは、新鮮かつ強いのではないか。
 伸び悩む売り上げ報告との睨めこがつづく中、マルヲは一つの決断を下すことにした。
 まるでマリー・アントワネトのような、ユーコの行動パターン。それを経営方針の基盤にすえるのだ。
 
 名づけて「パンがなければ、ケーキを食べればいいじない」商法。
 略して、PCT。
 表向きは「パフマンスでチンスを掴むぞ、東北」としているが、そのパフマンス第一弾がついにはじまる。
 徹底して客をコケにした企画。
 具体的には、エイプリルフールにかこつけたくじ引き大会だ。
 架空の木星旅行を謳い、客に三万円以上の買い物をしてもらう。
 商法違反を恐れぬ悪魔のアイデアである。
 店の命運どころか、身を滅ぼしかねないイベントなのにも関わらず、魔性に囚われたかのようにマルヲは満足げだ。

「あ、そうだ。店長」
 事務所を出ようとしたところで、ユーコは爽やかに振り向いた。
「今度は笹かまぼこを消しゴムで作て売てみましうよ。それと、買い物カゴがいぱいの客はウザイんで、重量で追加課金することも検討してください。一見客離れが進みそうですけど 、全然そんなことないですから。レジの行列が解消されて、きと人気店になりますよ
 呆れるほど悪知恵が働く女だた。
 客商売の意識など1ミリも持ていないにちがいない。
 まさに殿様商売ならぬ、女王様商売。
 もしくは、赤シツ商売か。

 事務所を出ると、水を得た魚の如く、ユーコはスキプでくじ引きブースへ向かた。
 途中、客の目を盗み、カゴの中の黄桃の缶詰を白桃の缶詰とすり替える。
 その様子を、マルヲは頼もしく見詰めた。
 ユーコを自由にさせていれば、何かが起こる。
 小売業の革命だ。
 クレーム上等、どんとこーい。
 
 その数分後。
 マルヲはまた閃いた。
 これをネタに小説を書いてみよう。
 まずはセルフパブリシングだ。
 事務所にあるパソコンのブラウザを立ち上げ、早速アマゾンに繋いだ。
 しめしめ、類似のストーリーはないようだ。
 俺は金脈を手に入れた。
 マルヲは怪しく双眸を光らせると、ふだんは使わないテキストエデタに「Uの刺激」と打ち込んだ。
 

参考文献
ヘリベ マルヲ著「Pの刺激」
http://www.amazon.co.jp/dp/B009XZQBTM
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