てきすとぽい
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第9回 てきすとぽい杯
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〔 作品12 〕
郷土愛
(
伝説の企画屋しゃん
)
投稿時刻 : 2013.09.21 23:45
字数 : 904
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郷土愛
伝説の企画屋しゃん
リ
ュ
ウケンの父親はキジムナー
だから、いつもガジ
ュ
マルの葉を腰に巻いている。
上半身は常に裸で、サンダルをはくことさえない。
リ
ュ
ウケンは長い間、それがキジムナー
の正装なのだと思
っ
てきた。
キジムナー
をモデルにした、スー
パー
のキ
ャ
ラクター
も似たようなものだ
っ
た。
「で、リ
ュ
ウケンよ」
父はある日のこと、サトウキビ畑の片隅で相談事を持ちかけた。
「で、
っ
て? で、
っ
て何?」
「そんなことは、どうでもいいさー
。お前も知
っ
てのとおり、この島はまだ暑い。内地のように、秋が来るなんてまだ先だ」
「俺は、ず
っ
と夏のほうがいい。冬はこの格好では、少し寒いしさー
。ま、キジムナー
だから、我慢するしかないけれどー
」
「そう。いくらキジムナー
でも、冬まで裸では風邪ひいてしまうさー
。だから、たまには服を着るのもいいんじ
ゃ
ないかと思うんだけどー
。この間、旅行者にく
っ
ついていた妖精がな、し
ゃ
れたもん着ていたさー
。こ
っ
ちじ
ゃ
、役人までかりゆしだけど、あれはか
っ
こいいさー
。うちらもイメチ
ェ
ン
っ
ていうのか? そんなのしてみてもいいと思うんだが、お前はどうよ?」
「イメチ
ェ
ン? 服? 何言
っ
ているさー
。キジムナー
が服なんて着たら、叱られるに決ま
っ
てるさー
」
「叱られる? 誰に? お前、勘違いしているかもだけど、キジムナー
が裸なのは金がないからさー
。金さえあれば、服着た
っ
て誰からも文句ないさー
」
父はそう言うと、腰に巻いた葉から商品券を取り出した。
「いやさ、妖精も長くや
っ
ていると、たまにはいいことあるものさー
。1000歳の誕生日に、お頭様からこれもら
っ
たさー
」
* *
電博堂沖縄支局の夜は長い。
一人きりにな
っ
たオフ
ィ
スの中で、プランナー
の佐竹は溜め息をつきながらモニタを眺めた。
土台、沖縄でスー
ツを売ることなど無理なのだ。
独り言をつぶやき、遅々として進まない企画書を睨みつける。
クライアントからのリクエストは、キジムナー
を主役にしたスー
ツのCMを作ること。
期限は、あと十二時間。
徐々に夜が明けていく窓を前に、佐竹はひらめいた。
キジムナー
だけに、生地が無ー
。
裸の王様をからめてみようかと思い立つが、またダジ
ャ
レ落ちかと叱られると気付いたのは、朝を迎えた後のことだ
っ
た。
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