第9回 てきすとぽい杯
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女子高生のおっぱい
投稿時刻 : 2013.09.21 23:25
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女子高生のおっぱい
なんじや・それ太郎


 仕事を終えた私が家に帰ていると、向こうから女子高生らしき人物が走てきた。その背後には彼女を追ていると思われる数名の男。
「この子も出目金にさせられちうのか?」と思いつつ、そちらの方というか、自宅の方に歩いていると、
「お父さん、助けて!」と言いながら、女子高生が私の腕にしがみついた。
 彼女を追ていた男たちは、
「はあ? いきなりスーツ姿のお父さんの登場かよ」
「クールビズ無視の展開かよ。今、何月だ言てみろ」
などと、訳のわからないことを好き勝手に口走た。

「いつもは未来のお姉さんが助けてくれるのに」とつぶやきながら、女子高生は私の腕を離さない。「一応、お父さんの振りをしてください。相手が躊躇するかもしれないから」
 胸の膨らみが私の上腕二頭筋を刺激してやまないのだが、「お父さん」と呼ばれるシチエーンでは、その感触を楽しむのも気が引ける。未来のお姉さんとやら、早く出てこい。さもなくば、この男ども、ささと消えてくれ。

「何だよ、てめえはよ」といらつく男たちをなだめようと、私はAKBぽい自己紹介で、
「たかやま、かずひこー♪」と自分の名前をJR東日本の接近音楽のメロデに合わせて歌てみた。
 ダメだ、全然受けない。こいつら、JR東日本とは無縁なのか。では仕方ない。別なバーンでやろう。
「たかやーまだ、たかやまだ、やまだじないよ、たかやまだ♪」

 すると、私の目の前の空気が何やらもやもや揺らぎ始め、さらに光を放たかと思うと、若い女性がいきなり登場した。
「未来のお姉さん!」と女子高生が嬉しそうに叫ぶ。しかし、自己紹介を途中で中断させられた私としては、どうしていいのやらわからない。これからがいいところなんだけど。

「おい、どうするよ」
「ここはずらかろうぜ」
 男たちは何やら弱気な相談をしている。未来のお姉さんの登場が効いたと見える。
「高山和彦だてさ」
「こいつに怪我でもさせたら、未来はねえぞ」
 いや、何だかおかしい、やつらは私の話をしているのか、それとも未来のお姉さんの話をしているのか?

「また痛い目に遭いたいの? あなたたち、ささと戻りなさい」
 未来のお姉さんがようやく口を開くと、男たちは
「覚えてろ」などと言いながら、すーと姿を消した。
 おお、何てわかりやすい悪役どもなんだ。

「大丈夫でしたか?」とお姉さんが私に聞く。
「え、俺が襲われようとしてたの?」
 襲われようとしてたのは、この女子高生の方ではないのか。おい、手を放せ。じなくて、もうしばらくそうしてくれても構わないぞ。

「いえ、話せば長くなるんですけど」
 そう前置きして口を開いたお姉さんの話は本当に長かた。
 近い将来、人類は不死不老を手にする。人々は自分の希望する年齢で成長をとめ、その年齢の肉体を半永久的に保持できる。つまり、自殺を除けば死ななくなる。寿命も延びる。その一方で人口抑制のため出産は認められず、人々は寿命が長いものだから、恋人や配偶者に対しても、一生連れそうという感覚をなくしてしまう。そして、いつかは今の恋人と別れるだろう、とか、今度の恋人はこの人になるかも、と思うと、簡単に浮気を経験するようになる。何万年も生きるようになると、性の価値観も狂てしまうようなのである。
 そんな中、「涼宮ハルヒ」や「あまちん」に興味を抱いた「処女ハンター」と呼ばれるアウトローたちが、時空を旅してこの時代の女子高生を手ごめにしようと暗躍し始めた。未来のお姉さんはそういた男どもの犯罪を防ぐ民間組織に所属しているとのことである。
 あー、しんど。

「で、高山和彦の件なんですけど」
「え、まだ続くの?」
 何でも私は2018年に、決死隊を率いて福島第一原発の燃料棒が地下水に直接接触するのを防ぐらしいのだ。これは英雄的な行為として未来の教科書にも載ているらしい。大河ドラマでも何度も放映されているとのこと。私を傷つけると、福島原発の災害がさらに広がる可能性を、男どもは危惧したようなのである。
「たぶん、俺はそこで死ぬんだろうな」
 まだ一度も足を踏み入れたことのない、福島のあたたた山だたか、そんな名前の山の名を思い出しながら、いや全然思い出せてないけど、私はつぶやいた。
 そこでちとも否定してない未来のお姉さん。そうか、私はやぱりそこで命を落とすのか。これが人生最後の女子高生のおぱいになるのか……。あれ、女子高生のおぱいなんて、人生最初の珍事だぞ。もと喜べ、高山和彦! あと5年の命なんだろうけど。東京オリンピクも見られないけど、喜んどけ!

 そんなこんなで家に帰た私は、一応ネトで自分の名前を検索してみたのだが、「福島決死隊」のメンバーの中に東芝の原発技術者であた同姓同名の男性の名前を見つけてしまたのであた(ここだけ実話)。
 いや、やぱり私が死にます。女子高生のおぱいとひきかえならば……
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