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クリスマスイヴぼっち小説大賞&ぼっちついのべ
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独り言の多い日
 投稿時刻 : 2013.12.24 22:04
 字数 : 1209
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独り言の多い日
松浦(入滅)


 今日ほど、そこかしこで独り言を耳にした日はないだろう。
 そんな一日だた。

 まずは通勤電車内からしておかしい。
「あー。もうクリスマスか。俺も、ほら、最近よく言うぼてやつ?」
 学校が冬休みだからだろうか。運良く座れた俺の頭上で、そんな声がした。
 チ
 これから会社まで、つかの間の休息をとろうというのに。
 よりによて、こんな近くに車掌君(車両内で、自発的に行き先案内などのアナウンスを大きな声でする困た人)がいるなんて。
 しかも今日は、いてることがおかしいよ。この電車は特別快速だろ? 次は新宿だろ? ちんとアナウンスしろよ! オマエの孤独アピールはどうでもいいんだよ。

 結局、四谷で俺が降車するまで頭上の独り言は続いた。
 時折、若い女が相づちを打ていたような気もするが、たぶん幻聴だ。
 だてそうだろ? 車掌君に話相手がいるわけないじないか。

 怪異現象は昼休みにも起きた。
 愛妻弁当がどうのこうの、という話が続きそうだたので職場を脱出しフミレスへ。
 ランチメニのハンバーグを食べているときのことだ。
 パーンの向こう側から、なにやら脂こい声がする。
 顔を上げると、磨りガラスに黒い影が映ていた。たぶん、スーツのリーマンだろう。
「俺もさ、昔は遊んだものさ。ちとワルだたし――。もう周りはみんな家族持ちだから、最近は寂しいもんだけど」
 チ
 中年リーマンのワル自慢かよ。うとうしいな。
 せかくのランチがまずくなるだろうが!

 結局、その禍々しい独り言は俺が席を立つまで聞こえていた。
 磨りガラスの向こうに、もう一人。何か明るい色の影が映ていたような気もするがたぶん幻覚だ。
 だてそうだろ? そんな面倒なやつと同席してくれる人なんているわけないじないか。

 一日の仕事をなんとか終えて、アパートの最寄り駅にかえてくる。
 仕事も大詰めだが、今日は変な独り言ばかり聞いていたせいで、頭がグラグラする。
 でも、踏切を渡て路地を入ればもう部屋はすぐだ。
 ん?
 今日に限て、人が多いな。
 足下から視線をあげると、遮断機の前に若者くんがずらりと並んでいる。
「結局、このメンツでクリスマスかー
「男ばかでつまんねー!」
「まあ、なんでもいいよ。ぼちの会もこうして無事にクリスマスを迎えられるんだから」

 ――!!

 なんだ、と!?
 いま、そこの無印ぽい若者はなにをいた?

 冷静になれ。
 俺は、自分に言い聞かせる。
 そうだ。こいつらは独り言をつぶやく個々人なのだ。
 偶然。本当に偶然、会話ぽく聞こえただけで。互いに相手を認識しているわけではない。
 だて、自分でぼていてるじないか。
 孤高のぼちが、男同士で酒飲んでクリスマスなんて。そんな友情ごこみたいなこと、できるはずがない!
 
 俺は、静かに視線をアスフルトに落とし、アパートへと急いだ。
 今日はいくらなんでも独り言が多すぎる。
 一刻も早く部屋に帰て寝てしまおう。
 今日は俺以外、なんかヘンだ。
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