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短歌小説コンペ
 1 «〔 作品2 〕» 3  14 
鬼住
志菜
 投稿時刻 : 2014.02.01 22:14
 字数 : 343
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鬼住
志菜


ぎりぎりと 狙いをさだめる 桃の弓 ひうと空切る 震える葦矢
ふかぶかと 突き刺さるのは 鬼のむね 驚愕したまま 両膝をつく

山深く ここは鬼住 霧の谷 人里はなれ 隠れるように

射止めたと 叫ぶは勇者 村人に 頼まれるまま 担がれるまま
こかげから ひとりの娘 走り出る なぜ射るのかと 恨みの瞳

流れ出る 川を染めるは 真赤な血 ひとと変わらぬ 真赤な血潮

娘言う さらわれたのでなく 逃げ出した 鬼の心の おまえたちから
いけにえの わたしはかれに 守られた 鬼の心の おまえたちから

ここへ来た 理由は何だ 金なのか それとも名誉 義心とは言わせぬ

もう言うな 苦しい息の それは言う ひとは異なるを 恐れるものだ
思い込む 姿がちがう ものならば 心もちがうに ちがいないと

これでよい ようやくこれで らくになる ほほえむように まどろむように

川向う ここは鬼住 森の奥 今も伝わる 桃の木の弓
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