てきすとぽい
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第一回 てきすとぽい杯
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初夢頬袋
(
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
)
投稿時刻 : 2013.01.19 23:30
最終更新 : 2013.01.19 23:43
字数 : 2081
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2013/01/19 23:43:42
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2013/01/19 23:39:45
-
2013/01/19 23:39:33
-
2013/01/19 23:30:05
初夢頬袋
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
机の上に置いていた携帯がメー
ルを受信した、マナー
モー
ドにな
っ
ていたから、大きな振動音がリビングに鳴り響く。慌てて手に取ると、送信者欄に『沢村加奈子』の名前が表示されていた。
『0時に送るとすぐに届かなそうだから、先に送ります。今年もお世話になりました。来年もよろしくね! Happy
New
Year!!』
笑顔の絵文字が末尾に添えられている。去年も同じようなメー
ルが来ていたなあ、と思う。東京の大学に通う加奈子は、去年から正月に帰省しなくな
っ
た。
紅白歌合戦は、私の興味のない演歌歌手の出番が続いている。黙
っ
て歌を聴いている両親と弟を置いて、私は自分の部屋に駆け込み、博史に電話をかける。
「もしもし? どうした?」
のんびりした声が聞こえてくる。低くて掠れた声は、電話越しでも甘くて、ああ、私はこの人が好きなんだな、と思う。
「声が聞きたくな
っ
た」
「なんだよ、それ」
笑
っ
ている博史の声はどこまでも朗らかで。ああ、この人を放したくない、と思う。私は枕元に置いていた、ミ
ッ
キー
のぬいぐるみを抱きしめながら、携帯から聞こえてくる声に耳を傾ける。ミ
ッ
キー
は、去年の誕生日、付き合
っ
て初めての私の誕生日に、博史がプレゼントしてくれた。やわらかいぬいぐるみは抱き心地がいい。
加奈子が悪いのだ。私だ
っ
たらこの人をどうや
っ
てでも手に入れておきたいと思うのに。
「初詣、一緒に行こうね」
すがるように言うと、
「ああ、約束しただろ。9時に迎えに行くから」
「約束だよ、約束だよ」
「どうしたんだよ、当たり前だろ?」
「うん」
私たちはそれから、他愛もないおし
ゃ
べりを電話越しに続けた。博史はず
っ
と私の電話に付き合
っ
てくれる。ああ、博史は私のもの。私の言葉しか聞いていない
……
急に安心感を覚えた私は、だんだんと頭が重くな
っ
てくるのを感じた。まだ夜の11時。いつもならこんな時間に眠くな
っ
たりはしないのに、どうして。
だんだんと相槌を打つのが辛くな
っ
てきて、気付いたら、私は夢の中にいた。
私は小さなケー
ジの中で、ひたすら回し車を回している。かたかたかたという音が鳴り響いている。
ああ、昔、ハムスター
を飼
っ
ていたな、と思
っ
た。いつまでも回し車を回していたり、餌をやれば全部頬袋につめてパンパンにしてしまう、おばかなペ
ッ
ト。
私は回し車を降りた。おがくずの絨毯はふかふかしていて気持ちいい。自分専用のケー
ジかと思
っ
たら、回し車から降りた私に、もう一匹のジ
ャ
ンガリアン・ハムスター
が歩み寄
っ
てきた。この子がジ
ャ
ンガリアンなら、私もジ
ャ
ンガリアンなのかな、と思う。
「回し車の順番を待
っ
ていたの?」
と聞いたら、その子は
「ううん。ごちそうが手に入
っ
たから、おすそ分けにきたんだよ」
と言
っ
た。
手渡されたのは、一粒の茶色いポ
ッ
プコー
ンだ
っ
た。
「大きいね」
「うん、大きいでし
ょ
。だから、頬袋に入れる前に少しだけ噛み砕かないとだめだよ」
言われるままに、私はそれをかじ
っ
てみた。
それは、キ
ャ
ラメルポ
ッ
プコー
ンだ
っ
た。表面は甘いのに、中は随分と塩辛くて、私はび
っ
くりして腰を抜かした。
「外側が甘いのに、中がし
ょ
っ
ぱいよ!」
「うん、そうだよ。でも、甘いのも、し
ょ
っ
ぱいのも、生きていくのに必要だよね」
私はそのとき、その声は、どこかで聞いたことがあるな、と思
っ
たけれど、そう思
っ
た瞬間に、目が覚めていた。
なんとなく、後味の悪い夢だ
っ
た。
「あけましておめでとう」
「おめでとう」
迎えにきてくれた博史と、手を繋いで近所の神社まで歩いてい
っ
た。雪は降
っ
ていなか
っ
たけど、今年の正月は随分と寒か
っ
た。手を繋いで肩を寄せ合えば寒くない。そう思
っ
て、できるだけ体をひ
っ
つけた。
博史と初詣に出かけるのは、これで6年目だ。博史は、高校2年生の時の同級生で、加奈子もそうで、ふたりは小学校からの同級生だ
っ
たから、私が出会う前から既に随分と仲がよくて、私がそこに加わ
っ
て、それから3年間、毎年3人で初詣をするのが習慣だ
っ
た。
魔が差したのだ。地元の学校に進学した私と博史。東京の大学に進学して、なんだか垢抜けて帰
っ
てきてしま
っ
た加奈子。私は冬休みに帰省してきた加奈子が妙に綺麗にな
っ
ているように見えて、突然、今まで覚えたことのない焦燥感と嫉妬心を抱き、そして、初詣に着物を着てきたいと言
っ
た加奈子と、博史を、引き合わせたくないと思
っ
てしま
っ
た。
加奈子、今年は帰
っ
てこないんだ
っ
て。そう嘘をついて、まんまと騙された博史と二人きりでい
っ
た初詣。初めての二人デー
トに、このまま押せば、私を選んでくれるかもしれないと予感し、そして私はその年の1月中に、博史とめでたく彼氏彼女になることができた。
おかしな嘘で初詣の約束をドタキ
ャ
ンされた挙句、突然二人の交際宣言を聞かされた加奈子が、何をどこまで悟
っ
ているのかはわからない。ただ、加奈子は実際、私によそよそしい連絡しかよこさなくなり、博史に至
っ
ては、何の連絡もしないらしい。
「ねえ」
「ん?」
「好きだよ」
そう言
っ
て博史の腕をきつく抱くと、博史は何も知らずに穏やかに笑う。
甘いのもし
ょ
っ
ぱいのも必要だよというハムスター
の声がこだまする。
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