第一回 てきすとぽい杯
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内角の和
茶屋
投稿時刻 : 2013.01.19 23:14
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内角の和
茶屋


三角形の内角の和は180°である。
ただしそれはユークリド幾何学での話で、非ユークリド幾何学の中では180°を超えちたりする。
球面の上に書かれた三角形の内角は180°を超えてしまたりする。
もちろん、曲率が負の数値であたりすれば、180°を下回たりする。
それはそんな物語だたのかもしれないし、そんなふうではない物語なのかもしれない。
そもそも物語ではなかたかもしれないし、そもそもそんなものは存在しなかたかも知れず、結局のところ三角形の内角の和なんて知たこないのさ。

腹が減て目を覚ます。
目を覚ましたかと思えば次の瞬間には冷蔵庫の前にいる。その間の記憶はなくて、おそらく酒がまだ残ているのだろう。
正月の夜からぶ通しで酒を飲み続け、次々と脱落していく地元の仲間達を横目に見やりながら、俺は最期の勝利の美酒を味わた直後に嘔吐し、曖昧な認識の中で布団らしきものの中に潜り込んだのだ。
今は何日であるのか。もはや途中からの記憶はポプコーンのようにはじけ飛んで、ただただ笑いながら酒をか食らていた。何度も同じ話をして、何度も同じ話に笑い、何度も同じ話をして、何度も同じ話に笑いと言た調子で朝日が登るのを何度か見て、初夢を見ぬまま今日までやてきてしまた。とすればさきの夢が初夢なんだろうとも思うのだがてんで夢の内容なんぞは覚えておらず、きと鷹と茄子の遺伝子を合体した富士山のような化物がでてきて扇でも仰いでいたんだろうよと嘯きながら冷蔵庫の中を漁るのであた。
冷蔵庫の中はと言えば漁るほどのものもなく、梅干しとお茶と哀愁のある貧困と賞味期限の切れた夢が詰まていたりした。
幸いにも冷蔵庫の上にはカプヌードルが乗ていて(いつも食うやつより50円ほど高級品)、そいつを腹に納めることに決めたわけだ。
電気ポトにお湯を入れて、お湯を湧かしている間にベドの上を見ながら呆然として、はたまた思案し、とりあえずスープのもとを入れて、また思案する。
ドの上には知らない女が寝ていた。
ならばまだいい。
ドの上に寝ていたのは俺だた。
「ゆーたいりだつー
プヌードルを腹に収めた俺は昔はやた一発ギグをとりあえずやてみる。
うん。やぱり面白く無い。
さてこの状況はどうしたもんかな。とりあえずカプラーメンは食えたわけだし幽体てわけじないんだろう。
いやいやまだ決めつけちイカンだろ。幽体がものを食えんなんぞ世間の勝手なイメージであて、「実は食えましたテヘ」なんつー世界で初の実証結果にならんとも限らん。いやいやそもそも幽体離脱なんてのは脳みその側頭葉と後頭葉だかの境にある身体感覚を司る部位が腫瘍云々で損傷、障害を受けた場合に発生する幻覚的な感覚に過ぎないのだ。
あこりなんだよ。
おかしいだろ。
つーこたこり夢かい。
とんだ初夢かい。
もしかして夢オチかい?
と思ていると突然肩を叩かれた。
振り返れば奴がいた。奴ての俺で、俺てのは奴で。
「ふーえーてーるー
「Yes」
て幻覚でも見とるんやろか。やーべーやーべーマジやーべーとりあえず寝るかよおい。とか言てるそばからベドには2人の俺が寝ていて、こたつでは俺が蜜柑を剥いていて、蜜柑あたのかよちくしプヌードルは寝起きにはちと重かたぜ!
そんなこんなで「ドキ!俺だけの大家族スペシル」状態で今日に至るわけだが、現行の法律では現状の俺の状態をどうすることもできず政府のお偉いさん方も俺たちを囲んで会議を連日繰り返すものの俺が増えるたびにその呼称を決めるのに難儀し、そもそもこの問題に対する対策室の命名が蒸し返され、いつ間にやら担当者が変わり、事務局の古株は頭がポプコーンみたいに弾けちまたわけで、仕事のない左遷部署に飛ばされちまた。
さてさてそんな訳で俺は、俺達は今日も生きてる。俺達はその後増え続けてしまて、俺の住んでいる市の1%ぐらいの人口比率を占めてしまていたりする。んでもて俺の行動パターンはどうしても似てくるてわけだから一緒の道を一緒に大行進する現象が度々見られるわけだ。まるでニスで見るなんかの生き物の大量発生て感じで、俺達が一歩進むたび大地は揺れて、振動が伝わてガラス窓が割れるような大惨事。なんてて俺だけの軍隊。シンクロ具合はばちりだ。
さてさて俺達の状態は続く。日本国の食料不足と酒不足は俺達が根本的原因で、ウリーを探せならぬ俺以外を探せ状態。
まーさすがにそんな状態になれば政府も重い重い重くて重くてメガトン級の腰をあげざるを得ないわけである特例法案を可決した。
名付けて俺一人法案。
俺の組織票によて俺党の議員を議会に送り込んでいたにもかかわらず、まだまだ力及ばずだたよ。
んでもてバトルロワイヤルが始また。
さすがに殺し合いの環境になると俺達も同調しなくなる。俺のある意味での自殺は何度も何度も繰り返されてピーク時の半分のなたものの、その後が大変だ。俺達は減るけれども、その一方で増え続けるわけだ。減少速度と増加速度が平衡に達した時、それ以上数は増えもせず、減りもしなかた。生き残た俺達は合意のもとで新参者を即時瞬殺する部隊を編成し持ち回り制で動員し始めた。
だが、気の変わた俺もいるわけで、新規増殖者たちを匿う勢力が現れた。
まーつまり、俺同士の戦争が始また。
そんなわけで俺の記憶を持た俺は戦場にいる。いつのまにやら。
きまで冷蔵庫の中を漁ていた気もする。
俺はさきまで俺だけだたような気もする。
俺は別に何も悪いことをしていない。ただ生まれただけ。こんな生きにくい世の中に、生まれてしまただけ。
死ぬことができずに、生き続けている。
俺は俺自身を殺していく。
俺が生き残るために。
別に生きたいわけじない。
別に殺したいわけじない。
けれども引き金を引く。
物を食べるように。
息をするように。
俺は俺を殺す。

内角の和を180°に戻すために。
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