第14回 てきすとぽい杯〈オン&オフ同時開催〉
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最初に目に映ったものは
志菜
投稿時刻 : 2014.02.08 21:48
字数 : 992
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最初に目に映ったものは
志菜


 最初は、きみの笑顔だた。
 何も言えずに黙ているぼくに、きみは手を差し出して、
「遊ぼう」
と、言てくれた。
 ぼくは、びくりして、恥ずかしくて、でもうれしくて、「うん」と頷いた。
 それから二人で一緒に遊んだ。
 ツヤツヤした椿の葉ぱを丸めた雪の上に乗せて、お菓子屋さんごこをしたり、真赤な南天の実と笹の葉を取てきて雪うさぎを作たり。雪合戦もしたね。
 そうしているうちにも、また雪はちらほら降り出してきて、きみはかまくらを作ろうと言た。
 前にテレビで作り方をやてたんだて。かまくらの中に入ると暖かいんだて。
 でもかまくらを作るには、まだまだ雪は足りないから、ぼくときみはあちこちから雪を集めてきた。
 駐車している車のボンネトから。ブロクの塀の上から。日陰になた沓脱石の上から。
 小さな雪の山ができたところで、辺りは暗くなてきた。ぼくはもう少し一緒に遊びたかたけど、きみは家の人が心配する前に帰らなくちいけないと言た。
 だから、ぼくときみは約束をした。
 明日もまた一緒に遊ぼうて。かまくら作りの続きをしようて。
 二人だけの約束をしたんだ。
 
 次の日、きみは学校に行た。
 見送るぼくに、ランドセルを背負たきみは
「帰るまで待ててね」
と、笑顔で言た。
 ぼくもきみに負けないくらいの笑顔で「もちろんさ」と笑た。
 その日は昨日と違て、とてもいいお天気だた。
 柔らかな日差しが暖かくて、かまくらの中とどちが暖かいかな、なんて考えながらぼくはきみの帰りを待ていた。
 お日様がどんどん高くなるにつれて、温かくて気持ちよくて、ぼくは眠くなてきた。きみがいなくて退屈だたしね。
 そして、夢の中で、きみと一緒にかまくらを作たんだ。
 大きな大きな山を作て、シベルで叩いて硬くする。それから入口を作て、どんどん中をくりぬいていくんだ。
 とても素敵なかまくらができた。夢の中でぼくたちは、並んで座て、白い世界をずと眺めていた。
 水色の、プラステクの二つの目で、キラキラと光る雪を見ながらぼくは、ずと、ずと、一緒にこうしていたいて思たんだ。

「あー、やぱり溶けちた」
 走て帰てきた少女は、溶けた雪の塊の前で呟いた。小さく口をとがらせて、雪だるまの目玉にしていた水色のペトボトルの蓋を拾い上げる。
 そのままポケトに入れて家に帰りながら、少女は小さなくしみをした。

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