第14回 てきすとぽい杯〈オン&オフ同時開催〉
 1 «〔 作品2 〕» 3  12 
みんなの笑顔のために
茶屋
投稿時刻 : 2014.02.08 18:48
字数 : 1598
5
投票しない
みんなの笑顔のために
茶屋


 誰かの役に立ちたい。
 誰かのために何かがしたい、そう思て生きてきました。
 たぶん子供のころ見たアニメか特撮の影響だと思います。
 つまりは皆の笑顔を守るヒーローになりたかたんです。
 でもまあ所詮ヒーローになるなんてのは夢物語ですよね。
 だから、諦めました。諦めたといて全部が全部を諦めたわけじないんです。
 ヒーローにならなくてもいい。皆の笑顔じなくてもいい。
 目の前の、誰かの笑顔を守る。
 身近なところからやていけばいい。
 けど、それが難しいんですよね。意外と。
 急な階段を上る老人を手伝てあげようと荷物を持てあげると泥棒と勘違いされたようで荷物の掴み合いになり、勢い余て老人が階段を転げ落ちて行てしまたこともありました。すぐに老人を助け起こそうとしましたが、もう息がありません。
 また別の時には貯水槽の周りで遊んでいる子供がいたので注意することにしました。ちと声をかけるだけじ効き目がありませんので大きな声でしかり怒ります。すると子供は驚いてしまたようで、その拍子に用水路の中に落ちてしまいました。
 はじめから大それたことをやるからいけないのです。もと小さなことから始めなければいけなかたのです。
 街の掃除から始めてみました。空き缶やら何やらを拾て一か所に集めます。すると集めたところに自転車に乗た高校生が突込んできて、そのまま前のめりに車道に飛び出し、そこへ車がやてきました。
 またある時は、迷惑駐輪を整理しました。まあよくあることですが、自転車と自転車のあいだが狭いので、自転車にぶつかてドミノ倒しというのがあるわけです。それが倒れていた先にまあ、ね。
 そんなわけでやることなすこと裏目に出てばかり。一向に誰かの笑顔を守ることはできていません。
 そんな私にも転機が訪れました。
 ふと夜道を歩いていると、一人の少女が息を切らして走てくるではありませんか。
 さらにその後ろから数人の男が後を追てきます。
 少女は私を見た瞬間助けを求めるわけです。
 私はその瞬間、奮い立ちました。
 これこそ子供のころの夢。
 ヒーローになれる瞬間ではありませんか。
 私は体中に力が沸き立つのを感じました。
 もう相手が屈強な男だろうが、銃を持ていようが関係ありません。
 たちまちのうちに黒服の男たちを叩きのめすと、少女のほうを振り返ります。
 笑顔です。念願の笑顔です。純粋で、可憐で、優しさのこもた笑顔。
 いえ、どんな笑顔でも良かたというのが、間違いだたのです。
 守りたかたのは、この笑顔だたのだと、確信しました。
 このかけがえのない笑顔を守ていかなければならない。そう強く感じました。
 その後も、彼女を追うものたちは現われましたが、私は政府の人間だろうが軍の戦闘兵器だろうがどんな強敵が現われても負けませんでした。
 彼女の笑顔を守て見せる。
 たとえ、どんなことがあろうとも。
 まさにヒーローです。
 笑顔を守るヒーローになたのです。

 でも、彼女の笑顔を守ることはできませんでした。

 結局、誰の笑顔も守ることはできませんでした。
 みんな、みんな。
 死んでしまいました。
 誰も笑てはくれません。
 私が守た彼女の笑顔。
 私が守た彼女自身が、すべての元凶でした。
 彼女はウイルスのキリアーたのです。彼女の体液に接触した人間は皆ゾンビになてしまい。ゾンビの体液に接触した人間は皆ゾンビになてしまいます。
 彼女は症状が出るのが遅かたようですが結局ゾンビになてしまいました。
 もう笑てはくれません。
 皆、皆、ゾンビになてしまいました。
 もう誰も笑いません。
 生き残たのは、何故かウイルスに耐性のあた私だけ。
 耐性といてもゾンビにならないだけで影響は受けています。
 今思えば銃弾で死ななかたのも、異様な力を発揮できたのもウイルスのせいなのでしう。
 私一人だけが生き残り、誰も笑てくれないこの世界で、
 私は、ゾンビを殺し続けています。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない