てきすとぽい
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第14回 てきすとぽい杯〈オン&オフ同時開催〉
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国旗掲揚
(
雨之森散策
)
投稿時刻 : 2014.02.08 18:56
字数 : 1362
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国旗掲揚
雨之森散策
「
――
ここまで来れば大丈夫だろう」
「奴らではこの高い崖を登
っ
ては来れまい」
「勝
っ
たな」
「
……
」
「しかし俺たちもまた手負いだ。特にお前の傷を早く治さねば」
「なあに、心配いらないさ。俺は強運の持ち主なんだ、この程度」
「そうだ
っ
たな」
「故郷に婚約者を待たせているんだ。早く戻りたい」
――
こいつらの会話を黙
っ
て聞いているうちになんだか俺は怖くな
っ
てきた。
『お前ら、ち
ょ
っ
と冷静にな
っ
て考えてみろ』などとという言葉まで口を突いて出てきたので三人はキ
ョ
トンとした顔で俺の方を見た。
「何が怖いんだ?」
「お前が臆病風とは珍しいな、らしくないぞ」
「もう勝
っ
たんだ、俺たちは。ああ、早く彼女の所へ戻りたい」
『だから、それをやめろ
っ
ての! 死亡フラグを知らんのか!』
「死亡
……
フラグ?」
三人の表情に暗い影が差した。
「新しいフラグメントグレネー
ドの名前か? 死亡だなんて縁起が悪いぞ」
「そうだ、お前は場の空気というものに少しは気を使うべきだ」
「ああ、早く彼女に会いたい」
『だからそれが死亡フラグだ
っ
ての! お前のその彼女が
~
っ
て奴が!』
「俺? なんでだ?」
奴はそう言いながらも愛しげに婚約者の写真を手で撫でている。
『いいか? 戦場で恋人の話をする奴は、間違いなく死ぬ』
「え?」
奴の手が止ま
っ
た。その両目には驚愕の色が宿
っ
ている。
「おい! 少しは考えろよ、そんな事言
っ
たら奴がビビ
っ
ちまうだろ?」
「俺達の最高のチー
ムワー
クにヒビでも入れるつもりかお前は?」
『ああああ!!』
堪らずに俺は叫んでいた。最高のチー
ムワー
クとか言
っ
たらそれこそチー
ム崩壊のフラグじ
ゃ
ないか!
『絶対に安全だと1000%確信するまでは少しも気を緩めち
ゃ
ダメなんだ! 勇ましいセリフも逆に危ない! それをお前らは分か
っ
てない!』
「100%の間違いか? アホだろお前」
『100%でも足りない
っ
て意味で言
っ
てんだよこのヴ
ォ
ケ!』
「なんだと?」
『とにかく! 勝利なんて確信しち
ゃ
いけない。婚約者の話も将来の話もNGだ。(もうダメ、俺たち死んじ
ゃ
う)くらいの気弱さで丁度いいんだよ』
「なんか危なくないか、こいつ? 俺怖くな
っ
てきた」
「今はお前に合わせてやるよ。俺たち死んじ
ゃ
うくらいが良いんだな?」
「いや、なんかそう言われるとマジで死にそうな気がしてきた。もう彼女の話はしないよ」
や
っ
と俺は一息つけた。この窮地で俺の意図を理解してくれる仲間で良か
っ
たと思えた。
『ありがとうお前たち。勝者の余裕とか明日への希望なんかは今は捨てるんだ、生き延びるために!』
「おお!」
そう言うと一人が
「しかし、この崖の高さは俺たちに余裕を与えてしまうな」
「もう少し低い方が気弱になれそうな気がする」
「降りるか
……
。死んじ
ゃ
うくらい気弱な方が生き残れるんだろ?」
『
――
え?』
三人は次々と崖を滑り降りてい
っ
た。
俺が余計な事を言いさえしなければこんな結果にはならなか
っ
たのだ。だからせめて完璧なチー
ムワー
クだけは崩壊させまいと俺も三人の後に続いて崖を滑り降りた。
「やつら、案外チ
ョ
ロか
っ
たな」
「全くだ。この程度の連中、俺達の相手には役不足」
「完璧な勝利だ」
「しかし俺たちもまた手負い。お前の傷などは深刻だ治療を急がねば」
「いらぬ心配だ。この程度」
「そうだ
っ
たな」
「早く故郷に戻りたい」
「
――
おい、お前たち。死亡フラグというのを知らんのか?」
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