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第14回 てきすとぽい杯〈オン&オフ同時開催〉
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ラスト・スタンディング
 投稿時刻 : 2014.02.08 19:17 最終更新 : 2014.02.08 19:20
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更新履歴
- 2014.02.08 19:20:23
- 2014.02.08 19:17:18
ラスト・スタンディング
晴海まどか@「ギソウクラブ」発売中


 電車に揺られていた。
 車窓越しにのどかな田園風景が果てしなく続き、流れていく。どこまでも見覚えのない風景。以前もこの近くを通たはずなのに。電車と車では、同じ景色でもこうも見た目が異なるのだろうか。
 面白いくらい人のいない車両の一番端この席で、静かに窓にもたれかかる。ガラス窓に寄せた頬が冷たい。

          ◇

 私を揺り起したのは、阪峰くんだた。私が目を覚ますと、心底ほとしたように笑みを向けてくれる。何かにつけて私にはもたいない彼氏である。おかげで若干の混乱しかそのときは感じなかた。
 私はなぜかアスフルトの上に倒れていた。小さな住宅街の中。首をめぐらすと、阪峰くんをはじめとした見覚えのある面々。ミナちん、橋本くん、堂下くん。阪峰くんと私も含め、みんな同じ英会話サークルの仲間だ。
 なんだか頭がぽうとしている。そうだ、みんなで堂下くんの運転で、海に行く予定だたんだ。水着だて新調した。あれ、私のバグはどこ?
「俺たちさ」
 口を開いたのは橋本くんだた。みよちんにずとアプローチをかけているけど、見事なまでに相手にされていないかわいそうな橋本くん。
「なんか、死んだみたいなんだよね」

          ◇

 電車は単線で、駅に到着するたびに通過待ちがあた。ドアが開いて、少し冷涼な空気が流れ込んでくる。
 ここに一人で来ることになるなんて。
 こみあげそうになる涙をのみ込んだ。私が泣く資格なんてない。

          ◇

 私以外の四人は、先に目覚めていたらしい。先に目覚めていた、ということからもわかるとおり、彼らも私と同様意識を失ていて、気づいたらこの街にいたそうだ。みんなで乗ていたはずの車や荷物は見つからず、着の身着のまま小さな街にいたのだという。
 わけがわからない。
「誰かいないの?」
 私の言葉に皆は顔を見合せ、首を振た。
「誰もいないんだ」
 いつも冷静な堂下くんは、こんな状況でもやぱり淡々としていた。私は堂下くんの言葉に眉間にしわを寄せた。
「誰もいない?」
 と、そのとき、ズボンのポケトに入れていたスマホが震えたのに気がついた。誰かのスマホがメールを受信した音が聞こえる。
「さきまで電波もなかたのに……
 そうスマホを取り出したみよちんが短く悲鳴を上げた。みよちんが先に悲鳴を上げていなかたら、私も上げていたかもしれない。
 見たことがないニスサイトが表示されていた。
『大学生グループ、旅行の途中で交通事故 四名が死亡』
 見覚えのある大学名。そして、死亡した四名の身元は確認中との記載。事故現場は、まさに私たちが向かおうとしていた観光地。
……今ここにいるの、何人?」
 みよちんの言葉に空気が凍りついた。

          ◇

 電車が再び動き出した。なんとなく、両手を見る。
 あのとき、最初に動いたのは橋本くんだた。
 どこにそんなものを持ていたんだろう、突然ナイフを振りかざした橋本くんは、いきなりみよちんの首を切りつけた。円弧を描いて飛び散た赤いものは、私の両手に飛び散た。
 悲鳴など上げる間もなく、みよちんが倒れた。
 静寂を破るように、再びスマートフンが震えた。誰かの呑気な着信メロデが流れた。
……ぱりだ」
 突然の凶行に走た橋本くんは、一人スマホを取り出して笑んだ。
「ここは、死後の世界なんだよ」
 ニスサイトが更新されていた。
『死亡者の身元が判明』
 みよちんの名前が掲載されていた。
 血だまりの中に横たわるみよちんに視線を釘づけにしていた私の手を引いたのは阪峰くんだた。
 逃げるぞ、だかなんだか言われたような気がしたがよくわからない。
 手を引かれるがままに走て、でも街の出口は見つからなかた。
「ここ、本当に死後の世界なのかな?」
……たら、もう全員死んでるてことだろ」
 いつの間にか、私たちの後ろに堂下くんがいた。
「生と死の世界のはざまてところだろ」

          ◇

 目的の駅に到着した。自宅から、三時間もかかた。車だともと近かたのかもしれない。
 網棚の上に置いていた大きな花束を手に、電車を降りる。
 潮の匂いが強い。海の近い田舎町だた。
 私たちが閉じ込められていたその世界はあまりに狭かた。すぐに追いかけてきた橋本くんに見つかて、阪峰くんと橋本くんが掴み合いになた。阪峰くんはなぜか拳銃を持ていた。橋本くんが額から血を流して倒れた。
……すごいな」
 重みのありそうな黒い鉄の塊を手にした阪峰くんは、それを私と堂下くんの方に向けた。
「ほしいと思たら、武器が出てくるんだ」
 阪峰くんがますぐにこちらに銃口を向けた直後、銃声が響き渡た。
 堂下くんまで拳銃を構えていた。阪峰くんが倒れる。
 今度は悲鳴が出た。肺にある限りの空気を絞り出した。いまだ状況を飲み込み切れていなかた頭が、ようやく回り出したのかもしれない。
 何、何、何、なんなのこれ。
 拳銃片手に、堂下くんはスマホを取り出した。例のニスサイトを見ているのだろう。身元不明者はあと一人? 一体どんなひどい事故だたんだろう。
……俺さ」
 何を考えているのかよくわからない、なんて評されることが多い堂下くんの笑みを、私は初めてみたような気がした。
「お前のこと、わりと好きだたんだよね」

          ◇

 花束を両手で抱え、ゆくりと歩く。
 来たことがあるはずの場所なのに、どうしてこんなにも覚えていないんだろう。
 堂下くんが自分のこめかみを撃ち抜いたその瞬間、視界がブラクアウトした。気がつくと、病院の一室に私はいた。
 私は、事故での唯一の生存者になた。
 潮の香りがどんどん強くなる。さびれた観光地。みんなと来たはずなのにどうしてこんなに――
 ――覚えていないのかて?
 ふいに、聞き覚えのある声が脳裏に響いた。
……みよちん?」
 ――スサイト、よく見てみなよ。
 記事にはリンクが貼てあた。ひとつ前の記事。
 ――君はさ、まち合わせに間に合わなかたんだよ。あの日、僕たちに合流する前に……
 今度は阪峰くんの声だた。
『女子大生、電車のホームから転落』
 潮の香りが急に遠のいた。目の前に、あの住宅街が広がている。
 橋本くんの声がすぐ後ろでした。
 ――ぱりここは、死後の世界だたんだよ。
 振り返る。そこには、懐かしい彼らが揃ていた。
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