てきすとぽい
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第15回 てきすとぽい杯
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けむたくない
(
めぐる
)
投稿時刻 : 2014.03.08 23:38
字数 : 1008
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けむたくない
めぐる
最後にいつもの挨拶をゆ
っ
くりと読み上げて、ゆるやかにBGMが小さくな
っ
ていくのを聞き届ける。
自分の声に余韻を感じるなんて自惚れているかもしれないけれど、ラジオ局の一日をしめくくる深夜3時なら似合わないことでもないだろう。
ガラスの向こう側でも大体は肩の力を抜いて一息してから片付けなどを始めるのだが、今日はやけに忙しそうに動いている。打ち上げの場所まで決ま
っ
ている雰囲気だ。
「桑名さん、今日は焼肉
っ
ぽいですよ」
だから撤収はなるはやで。スタジオを出るとデ
ィ
レクター
の八木君が何故か耳打ちで教えてくれた。
こんな時間からでも、探せばそれなりに深夜営業をしているお店は見つかるものだ。春に番組を始めた時にはフ
ァ
ミレスに行くこともあ
っ
たけれど、以前深夜を担当していた先輩に教えてもら
っ
たり番組で取材をしたりする内に5時まで、7時まで、と飲み屋や食堂がころころと発掘されてきた。
その後プロデ
ュ
ー
サー
の鶴橋さんの号令で車に乗り込み、私達は焼肉屋を目指す。
ダイエ
ッ
トをしていると聞いたばかりの気がするADの名張さんも付き合いでとは思えない目の輝きをも
っ
たまま隣に座
っ
ていた。
「おいしそうですね」
食べる前からとろけそうな顔をしている名張さんが、テー
ブルに並んだ桜色の豚やら牛やらのお肉を見回した。
そのまますぐ食べられるならつまんだら伸びるんじ
ゃ
ないか
っ
てくらい更にとろけた顔を見れるのに、焼肉というのは目の前の網に肉を乗せて具合を見て、全員が満遍なく食事できるように配慮しなければならない。
八木君がここに初めて来た時激しくA型だと主張していた。
それからは八木君まかせだ。時々名張さんが焼け具合に、鶴橋さんが取り分けの分量に口を挟む。
私は商売道具で店員さんを呼んだりするくらいだろうか。
「春にある、卵に色をつけて隠す
っ
てやつ、何でした
っ
け?」
そういえば鶏肉がないですね、という名張さんが驚きの方向に話しを持
っ
てい
っ
た。
「マトリ
ョ
ー
シカ?」
牛タンがじ
ゅ
っ
と油を落とす音が聞こえてからようやく、
「イー
スター
だよ。かすりもしてないじ
ゃ
ないか」
鶴橋さんがツ
ッ
コミを入れてくれた。
「で、鶏肉頼みまし
ょ
うか?」
ひと段落した所で呼び出しボタンに手をかける。
名張さんはマトリ
ョ
ー
シカがツボに入
っ
たみたいでお腹を抱えているし、八木くんは壷漬けカルビまで頼もうとしているし、鶴橋さんはあきれて烏龍茶を飲んでる。
今月末で番組が終わ
っ
てしまうなんてうそみたいだ。
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