第二回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動一周年記念〉
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投稿時刻 : 2013.02.16 23:57
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AKB
工藤伸一@ワサラー団


「お客様の中にAKBのメンバーはいらいませんか」

 飛行機での尋ね人といえば「お医者さま」が定番だと思い込んでいたが、何せ乗るのは久しぶりだから実際にはそうではないのかもしれない。とはいえAKBのメンバーを探さなくてはいけない状況とは一体、何が起きているのか。

 座席を離れアナウンスしていたキビンアテンダントのもとへ伺い「どうしてAKBのメンバーが必要なんですか」と質問を浴びせてみたところ「お客様はAKBのメンバーですよね。だたら助けて下さい」などと切り返してきたので、どうしてバレたんだろうと怯みつつも平静を装て「もしそうだたとしても理由が分からなければ名乗れませんよ」と答えたところ、今度は「見れば分かりますよね、この惨劇を」などと倒置法の修辞で畳みかけてきたものだから、フストガンダム世代の僕は嬉しくなて思わずシアの名言「認めたくないものだな。自分自身の、若さ故の過ちというものを」をそのままパクて伝えてみたらば、案の定CAはアニメの知識が不足しているらしく「何のことか分かりませんが、とにかく助けてくれませんか」とテンパた調子で僕に縋りついてきたので、仕方なく何が起きているのか目視で判断することとなた。

 いまCAの側に座ているのは、緑色の身体から手足が48本も伸びているのみならず、顔面には目鼻口どれを数えても48個ある異形の生物であり、どうみても人間には思えないから、体調を崩しているのだとしても人間と同じような方法では助けようにないことが判明した。なるほどそれで「お医者さま」ではなく「AKBのメンバー」でなくてはならなかたのだ。しかし気がかりな点は他にもあるので、ちんと確かめておかなければならない。

「それにしても何故、男の僕がAKBのメンバーだと分かたんですか」
「だてAKBのテツを着てるじありませんか」
「それで判断できるならAKBヲタクは皆メンバーてことになりますよ」
「そんなはずはありません。だてお客さまの着ているテツはメンバーしか着られない特別なものですよね」
「そこまで知られているのなら、もはや白状するしかない。ご指摘の通り僕はAKBのメンバーです」
「しかもネ申セブンの一員ですよね」
「お詳しいですね。いやはや驚きました。確かに僕はAKB男組のセンターを務めています」
「だたら早く何とかして下さいませんか」
「そうしたいところですが、異形の生物を助けられる能力なんぞ持ち合わせておりません」
「異形の生物ではありません。ついさきまでは普通の人間のなりでした」
「つまりその方が急に変身してしまたわけですね」
「ですからAKBでないと対処できないんです。客室乗務員のマニアルにも書かれています」
「ならば断るわけにいきませんな。まず先に僕がツイートしますから、それを読んで下さい」
「当機ではネトの利用を禁止しておりますので、ツイートはやめてください」
「それならエアツイートにしておきましう。今から手書きで書きます」

 AKBテツの上に羽織ていたジトの胸ポケトから手帳と万年筆を取り出し、一気呵成に書き上げてCAに手渡した。「さあ声に出して読んで下さい」

   ☆

「書くことは生きることだ」て誰の言葉だたかな。「書くのが下手なら書かない方が良い」なんてのは「生きるのが下手なら生きない方が良い」と言てるのと同じだ。相手が誰だろうと、そんな説教をされる筋合いではない。

   ☆

 それを聞くなり機内の客がどよめき始めた。予想していたことではあたものの、その殆どがブーイングだたので、僕は落胆した。しかもCAはその反応を受けて恨みがましい目つきでこちらを睨んでいる。

「これは僕のせいではありません。貴女の読み方が下手なんですよ」
「下手なら書かない方が良いという意見を批判しておきながら、下手なら読むなと仰るんですか」
「それとこれとは話が違います。だて貴女は僕の正体を知ているのですから」
「どういうことですか」
「こういうことです」

 吐き捨てるようにそう言うなり、ジトもテツもジーパンもボクサーパンツも全て脱ぎ捨てて産まれたままの姿を曝け出し、腰に両手をあてて股間のイチモツの先端を舐めろとばかりにCAの唇に押し当てた。CAのデプスロートによて跳び出した白濁汁は異形と化していた客の体中に飛び散り、千手観音のように伸びていた手足を溶かし、爬虫類めいた肌の色や増殖していた目鼻口も次第に変化して、人間の姿に戻た。なお仕事を終えるまでに五回も射精をする必要があたため、僕はすかり疲れ果てて「こんなことをしている場合ではない」と賢者タイムに陥た。

「どこのどなたか存じませんが、助けてくれてありがとうございます」人間に戻た姿はまるで本物のAKBメンバーくりだたので訝しく感じているとCAは「そうなんです。このお客さまは貴方の推しメンだたのです」「だたら最初から言てくれれば良かたのに」「それはプライバシーの侵害に当たりますので無理でした」「まあしかしこれで本物のAKBの未来は明るくなたわけですね」「その通りでございます」CAと推しメンの二人は、すかり萎び果てた僕のジニアを愛おしげに愛撫しながら、安堵の涙を流し続けた。

 まあそんなわけで僕は久々のフライトによて日本の至宝を救えたようだ。なお「AKB男版」などというアイドルグループは存在しない。僕が属している組織は「諦めることなく・書き続ける・馬鹿たち」の頭文字をとて「AKB」なだけなので、本物のアイドルがそれを知てるはずもないし、ましてや何の関わりもなかたCAに見抜かれる可能性も考えられなかたものだから、今回の珍事を持てして僕らの知名度が少しでも上がてくれたなら幸いである。

 それにしてもどうして本物のAKBメンバーがあのような大惨事に見舞われたのか。故郷の空港に到着後、件のCAに誘われて待ち合わせたレストランで問い質してみると、実はあの機内にはAKB関係者しか乗ていなかたというのだから、本物のAKBメンバーではない僕が同乗していたのは、何とも素晴らしい偶然だたことになる。精力のつく亜鉛を多く含むカキフライを食べたおかげで僕のギランドは復活。CAとの激しい夜を共にすることとなたのは言うまでもない。何て下らないものを書いてしまたのか情けなくなるけれど、だからこそ僕はこれから先どんな困難に阻まれようとも「諦めることなく・書き続ける・馬鹿たち=AKB」で今後もいられる自信がついた。(了)
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