てきすとぽい
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第二回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動一周年記念〉
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〔 作品19 〕
見知らぬブランドの炭酸水
(
タカダノブユキ
)
投稿時刻 : 2013.02.16 23:59
字数 : 1176
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見知らぬブランドの炭酸水
タカダノブユキ
「お客様の中に船外活動経験者はいら
っ
し
ゃ
いませんか」
「およそ15分から30分程度の短時間の作業です」
「お客様の中に船外活動経験者はいら
っ
し
ゃ
いませんか」
「作業内容は3ステ
ッ
プです。ステ
ッ
プ1、本船後部ハ
ッ
チから船尾方向7メー
トルにある損傷箇所への移動および被害状況の目視確認。ステ
ッ
プ2、・・・」
何名かのフライトアテンダントが客席通路を行き交いながら呼びかけている。
先ほどの機長のアナウンスどおり、この船はあまり良くない状況に置かれているらしい。
惑星間定期便の路線上に、小惑星が浮遊しているのは稀ではない。
通常は外壁のシー
ルドが衝突を回避してくれるが、たまにシー
ルドをすり抜ける材質の小惑星がある。
それらは事前にレー
ダー
で確認して避けられるのだが、今回は運悪くレー
ダー
を掻い潜
っ
てきた奴がいたのだ。
この船(地球衛星軌道上にある銀河空港の、64番デ
ッ
キ、、あまり便数のおおくない路線用の、ち
ょ
っ
と寂れた雰囲気のある搭乗口から出発した、金星行きAWA312号)は、乗客もまばらな田舎路線だ。
乗客は、金星鉱山で働くわずかな技師とその家族、
それにボランテ
ィ
ア精神旺盛な医者(私)くらいのものだ。
船外での補修技術を習得しているとなれば、
航空関係者か軍関係者のどちらかだろうが、この船には乗
っ
ていそうにない。
わざわざ金星観光しようという物好きの富裕層なら
船外活動にもつかえるアバター
システムを携帯していそうだが、
そういう層は惑星定期便など使わないだろう。
それにしても、常任の船外活動者が乗
っ
ていないほどの田舎
っ
ぷりには恐れい
っ
た。
あれほど賑わ
っ
た金星鉱脈も、もう昔話ということか。
「お客様の中に船外活動可能な方はいら
っ
し
ゃ
いませんか」
「およそ15分から30分程度の短時間の作業です」
「お客様の中に船外活動可能な方はいら
っ
し
ゃ
いませんか」
「作業内容は3ステ
ッ
プです。ステ
ッ
プ1、本船後部ハ
ッ
チから船尾方向7メー
トルにある損傷箇所への移動および被害状況の目視確認。ステ
ッ
プ2、・・・」
「あの・・・」
と私はアテンダントの一人に声をかけた。
「はい! お客様は船外活動経験者でいら
っ
し
ゃ
いますか・・・」
と、ぱ
っ
と輝くような笑顔をむけて応えた彼女をが
っ
かりさせたのは残念だ
っ
たが、
そうではない旨を告げて、炭酸水(地球のペリエを希望したが無か
っ
たので、見知らぬブランドのもの)を持
っ
てきてもら
っ
た。
よく冷えた炭酸水をふた口飲み、ようやく一息ついた。
すでに船内の気温は10℃ほど上がり、乗客のまばらな客室もさすがにざわついてきて、
なかには大声で怒鳴るものもでてきた。
まあ、おそらく時間切れであろう。
私は子供の頃に連れてい
っ
てもら
っ
た月面サウナも
こんなふうにざわざわしていて暑か
っ
たなあ。。などと思いだしながら
見知らぬブランドの炭酸水を一口含んで、もうしばらくうとうとすることにした。
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