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第二回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動一周年記念〉
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居眠り
茶屋
 投稿時刻 : 2013.02.16 23:11
 字数 : 2372
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居眠り
茶屋


 お客様の中に___はいらいませんか?
 まどろみから覚める数瞬前、そんな言葉を耳にしたような気がする。まだ意識ははきりしないが、車内は騒然としている様子だ。
 いたい何が起きたのかは分からないが、私の安眠を邪魔するとは甚だ無礼ではないか。この電車の中での安眠を心待ちにして電車に乗り、電車の安眠がために居酒屋で日本酒を一献やてきたのだ。
 しかしながら覚めてしまたものは仕方がない。いささか不本意ながら目をこすて目をさますことにする。ガヤガヤと人の声が入り交じていてイマイチ状況は把握できぬが何やらただならぬことが起きている様子である。ただならぬ様子ではあるが電車は止まておらず、窓の外の景色は早々と移り変わていく。ただならぬことが起こているといても私のあずかり知らぬところである。
 不満気に窓の外を見ているのだが、どうにも周りが煩くてしようがない。風呂敷の中から携帯音楽プレーヤーを取り出して、イヤホンを耳にはめる。いつもよりも音量を大きくして、外界からの振動を鼓膜に伝わらんようにしてやる。
 憮然とした面持ちの己が窓に映ている。なんとも不細工な顔だが仕方あるまい。生まれてからずとの付き合いである。慣れたものだ。そんな見慣れた自分の顔を仔細に観察しているうちに再びまどろみの中へと飲み込まれていた。

 お客様の中に爆弾処理班の方はいらいませんか?
 そんなものがいるわけがない。
 荒唐無稽なそのアナウンスはそれが夢であろうことを告げている。
 夢を夢であると自覚することは滅多にないが、今日はそれをしてしまたらしい。夢のなかで夢と気付くなど夢の趣もわびさびもあたものではないが、気づいてしまたものをいまさら忘れるなどという技術は身につけておらず、夢のなかではもはや眠気が消え去てしまている。
 誰も挙手せぬものだから、ついつい挙手してしまた。
 これが夢ならば、ととと爆弾なりを爆発させてしまえば別の夢に移行できるわけであり、さすれば夢と気づかぬ夢を見ることができるやも知れぬのだ。
 車掌だか客室乗務員だかわからぬ輩に案内されて、行た先は御不浄、便座を上げて用をたすところにただならぬ雰囲気をまとた爆弾が設置されていた。車掌の言う話にはたた今連絡が入り、トイレに爆弾が設置されていること、列車が停またら爆発する仕掛けになていることが知らされたのだという。
 なんとも物騒な世の中である。これではうかうか車中で腹痛も起こせぬ。
 物売りの女がなにやら道具をいろいろと持てきていて、何を使うのかと問うてきたが、それを手で制して、腰に下げた刀を抜いた。
 爆弾なぞ、一刀両断にたた斬るしまえばよいのだ。
 ええい!

 お客様の中に正義の味方の方はいらいませんか?
 また、夢のなかである。
 どうやら爆弾は爆発したらしいが、別の夢のなかでまで夢と気づいてしまたらしい。
 正義の味方など、今度は先程よりも甚だふざけた夢である。ふざけていると憤慨して文句でも垂れてやろうと立ち上がてみると、奇妙な姿をした怪人が乗客の令嬢を人質にとて何やら喚いているではないか。秘密結社のこうこうこういうもので、目的はこうこうこういうことであり、その崇高な目的のためこうこうこういうものがこうこうこういう方法で戦ているという口上である。涙ぐましい努力であるのはわかるが、秘密結社の構成員たるものが堂々と名を名乗るなど馬鹿にも程がある。いわゆるゆとり世代というやつであろう。秘密結社も毎年新入社員を迎え入れるだけの資金が潤沢にあるようだ。
 さて、私が立ち上がてしまたものだから、その怪人に目をつけられてしまた。
 怪人は怒り狂たように、なにやら言語ならぬ言語を吐き散らすと、長い触手をしならせて私の方に打ち出してきた。
 すんでのところでそいつをかわすと隣席の乗客をひと飛びに乗り越え、中央の廊下を一気に駆けた。
 二手、三手と次々と繰り出される攻撃をかわしては、刀で切り結び、懐まで一気に踏み込んで入ると脇差を抜き放ち、怪人の人質を押さえていない方の手を斬り、もう一方の刀で足を両断した。
 怪人の断末を聞き、返り血を浴びながら私は次の夢は気づかぬようにと願い、怪人を一刀両断に叩ききた。

 お客様の中に魔法少女の方はいらいませんか?
 私は天井のスピーカーを一刀両断に叩ききた。

 お客様の中にお侍様はいらいませんか?
 これは夢であろうか、現実であろうか?
 もはや幾度、客の中に何者かを探す声を聞けばよいのだろうか。
 私はその声を聞くたびに何かを叩き斬り、夢から逃れようと懸命にもがくのだが、どうもそれが悪い方向に行ているような気がする。
 もはや、その声を無視すれば良いのだろうが、今度ばかりはそうもいかぬ様子である。
 今度は電車の中でない。
 目をさましてみれば、なにやら屋敷の庭の様子である。
 はて?と思て首をかしげ、あたりの様子を見て、また別の方に首を傾げる。
 お客様の中にお侍様はいらいませんか?
 どこからともなく聞こえてくるその声は、私を促している様子でもある。
 仕方なく、「私が侍だ!」と声をあげる。すると屋敷の障子の奥から声がした。
「曲者じ!であえ!であえ!」
 今度もまた立斬らねばならぬようである。

 お客様の中に夢を見ている方はいらいませんか?
 それは私のことである。
 私は夢を見ているのだ。
 とびきり面倒で、厄介な夢を。
 私だ!
 と言おうとするのだが、どうにも声が出ぬ。
 何やら、嫌な予感がする。
 必死になて叫ぼうとするが、やはり声は出ない。

 いららないようですね。

 いや、いる。ここに、私が。

 では、出発いたします。

 待て、置いて行かないでくれ。
 頼む。
 待てくれ!








 お客様の中に小説を書いているはいらいませんか?
 
 いらいませんね。

 では、出発いたします。
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