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第19回 てきすとぽい杯〈日昼開催〉
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〔 作品9 〕
某提督の孫娘
(
工藤伸一@ワサラー団
)
投稿時刻 : 2014.07.13 16:15
字数 : 1746
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某提督の孫娘
工藤伸一@ワサラー団
部屋のドア越しに長女へ声をかけた。
「パパだ。勉強は捗
っ
ているか?」
返事がないけれど留守ではあるまい。
何か書いているような物音が聞こえる。
「どうした。悪いが入らせてもらうぞ」
やはり学習机に向か
っ
ている背中が見えた。
「勉強中か。声に気付かないとはすばらしい集中力だ」
机の上を覗き込もうと近づいたところで娘が振り向いた。
「なに勝手に入
っ
てるの!」
そう怒鳴りつつ耳からイヤフ
ォ
ンを外す。
「ごめん。音楽を聴いてたのか。声はかけたんだよ」
「だから何。許可も得ず入るなんてサイテー
だろ!」
「いや、いるのに返事がないのは親として心配だし」
「そんなことい
っ
て娘の部屋が見たいだけなんだろ、このクソ提督!」
「親に向か
っ
てクソとは何だ。つー
か提督?」
「しま
っ
た。何でもないよ」
「いや、大事なことだぞ、これは。ち
ゃ
んと説明しなさい」
「ゲー
ムの台詞だよ。海軍をテー
マにした」
「そり
ゃ
奇遇だな」
「何がよ。まさかパパもや
っ
てるの?」
「それが『艦これ』なら言う通りだ」
「何かイヤだな。まあ男性向けだし仕方ないか」
「パパは良く海軍の話をしていただろ」
「そんなこと覚えてないよ」
「お前がまだ幼い頃だ
っ
たな」
「何がキ
ッ
カケで始めたんだ?」
「自分の名前と同じ軍艦があると聞いて」
「そり
ゃ
そうさ。それが元ネタだからな」
「軍艦から名付けたの?」
「名付け親のグランパは提督だ
っ
たからね」
「マジすか。もしかして自分も乗
っ
てた船?」
「らしいよ。もう詳しいことを訊けないのが残念だ」
「でも何か当時のものとか残
っ
てないの?」
「あるはずなんだ。しかもこの部屋に」
「どうしてここに?」
「だ
っ
てお前は同じ名前なんだから」
「それで隠しておいた
っ
てこと?」
「なのかな」
「じ
ゃ
あ何で教えてくれなか
っ
たの?」
「忘れてたんだ。でもクソ提督
っ
て呼ばれて思い出した」
「酷いこと言
っ
てゴメン」
「いいんだ。勝手に入
っ
たのは事実だから」
「ありがとう。それでその遺留品、何とか見つけられないかな?」
「せ
っ
かくだから捜してみよう。でも手掛かりがないんだよ」
「もしかして机の引き出しかな。グランパからのプレゼントだ
っ
たし」
「そのセンはあるな。使
っ
てない引き出しなんてあるのか?」
「ないけど、奥の方に隠れてたりしそう」
「じ
ゃ
あ捜してみてくれ。机の中を見るのは気が引ける」
「当たり前でし
ょ
。とりあえず部屋の外で待
っ
てて」
「わか
っ
た」
リビングのPCで『艦これ』の任務をこなしつつ待つことにした。
ち
ょ
うどデイリー
任務を終えた頃、娘が走り寄
っ
てきた。
「パパ、あ
っ
たよ!」
「でかした。それで何が見つか
っ
たんだい?」
「写真」
「船のか?」
「ううん。美人さん」
「誰かな?」
「分かるわけないでし
ょ
」
「それもそうだ。とにかく見せてくれ」
「まさか。あの艦娘に瓜二つじ
ゃ
ないか!」
「ビ
ッ
クリよね。しかも私と同じ名前の船だし」
「グランパがゲー
ムの開発に関係していたとか」
「ないでし
ょ
。パソコンとか全く触
っ
てなか
っ
たもの」
「だよな。でも企画段階ならパソコンなくても可能だ」
「まあ、キ
ャ
ラデザインとか、手書きで出来るもんね」
「気になるな。とにかく調べてみよう」
「どうや
っ
て?」
「思い出した場所があるんだ。お前も行くか?」
「もちろん」
「分か
っ
た。すぐに着替えて出るぞ」
「パパは着替えなくてもいいのに」
「そうもいかない。お前はこれを着なさい」
「準備は出来たか?」
「出来たけど、どうしてセー
ラー
服なの。もう大学生なのに」
「歳は関係ないだろ。原型は水兵さんの制服だからな」
「つー
かパパも提督みたいな恰好しててウケる!」
「グランパの遺品だ。こういうことでもないと使う機会ないし」
「何だか楽しくな
っ
てきた!」
「パパもだ。しかし気を抜いて慢心するなよ」
「もちろん。準備は万端よ」
「じ
ゃ
あ、行こうか」
「イエ
ッ
サー
!」
思えば娘と出かけるのは何年ぶりだろう。
ママは息子と仲良しなのに父娘は難しいもんだ。
グランパと『艦これ』に感謝しなくち
ゃ
な。
それにしても軍服を着ると気持ちが引き締まる。
というより自分が戦地にいるような気分にな
っ
てくる。
娘も同じだろうか。
いや、単なるセー
ラー
服だ
っ
たな。
まあとにかく、鬼が出るか蛇が出るか。
不安だが、娘といれば大丈夫だろう。
「パパ、何か言
っ
た?」
「セー
ラー
服、まだまだ似合うな」
「なのです!」(了)
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