第三回 てきすとぽい杯
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投稿時刻 : 2013.03.16 23:28 最終更新 : 2013.03.16 23:40
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- 2013/03/16 23:28:46
散歩
たきてあまひか


 最近、毎朝シロの散歩をするようになった。
「まじめに連れて行っていてえらいわね。まるでシロがうちに来た頃みたいじゃない」
 母に褒められて、私は照れ笑いをする。
「じゃ、いってきます」
「気を付けてね」
 シロの首輪から鎖を外し、引き紐に繋ぎかえる。シロは散歩がうれしいのか、わあっと前足を持ち上げて私に飛びついてくる。
「ちょっと、もう、おちつきなさい」
 毎朝のことなのに、どうしてこんなに嬉しそうなんだろう。母が散歩に連れて行っていたときも、こんなに喜んでいたのかな。跳ねるように私の周りをかけ、尻尾をぱたぱたと振りながら、シロは出発をせかす。
 自宅前の通りを道沿いに抜けて、芦刈川の堤防に突き当たり、堤防のサイクリングロードを川下方向に進んだあと、河川敷の広場でシロを少し放す。これがいつもの散歩コースだ。距離的にはそれほど長くないけれど、そのぶん広場でシロと遊ぶ時間をとるようにしている。
「ほらいくよ?とってこーい!」
 力任せに黄色いゴムまりを投げると、シロは猟犬みたいに駆け出して、ゴムまりを咥えて戻ってくる。私の前にゴムまりをおくと、「さあ!さあもう一度!」という表情で私を見上げる。なんて楽しそうなんだろう。ものすごい勢いで尻尾を振っていて、まるでヘリコプターみたいだ。このままとってこいを続けたら、シロは飛んでしまうんじゃないかと思った。
「じゃあ、もう一度。っとーーってこーーい!」
 何度かとってこいを繰り返しながら、もうそろそろかなあ、と思っている。
 まだかな、と思っている。
「おはよう、畑山さん」
「っ、おはよう、石野くん」
 私は平静を装いながら、シロの首輪にロープをつけた。
「もういいのかい?」
「うん、十分遊ばせたから。はなしておくと、うちのシロ、チョコちゃんにちょっかい出すからさあ」
 チョコちゃんというのは、今目の前にいる石野くんが飼っている犬のことだ。小さくて、もじゃもじゃで、確か何かの血統書付きと聞いた。石野くんはクラスメイトで、バレー部で、得意科目が数学で、英語は苦手で、そして、毎朝チャコちゃんの散歩でこの河川敷の広場にやってくる。
 私はシロがチャコちゃんのほうに近づきすぎないように引き紐を引っ張りながら、少しだけ石野くんと会話をする。シロと来たらチャコちゃんを目の前にして、また尻尾をぐるんぐるんと振っている。
「じゃあ、私行くね。そろそろ朝ご飯の時間だから」
「ああ、じゃあまた学校で」
「またね」
 私にしっぽがついていなくて本当に良かった。きっとしっぽがあったら、そりゃあもうすごい勢いで振っていたに違いないのだ。
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