てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
【BNSK】品評会 in てきすとぽい season 7
〔
1
〕
…
〔
3
〕
〔
4
〕
«
〔 作品5 〕
»
〔
6
〕
〔
7
〕
わかってくれないよ!
(
大沢愛
)
投稿時刻 : 2014.10.11 18:57
字数 : 3304
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1+
ログインして投票
わかってくれないよ!
大沢愛
あの陰険女!
だ
っ
てさ、在籍期間が違うから顔を合わせたこともなければメー
ルのやり取りをしたこともない。
なのにね、こ
っ
そりと私の悪口を言い残している。それもし
っ
かりと広まるような形で。むか
っ
腹が立つわ!
わざわざ、上司がいなくな
っ
て私が姿を消して、反論できなくな
っ
てから、
っ
てところもあの女らしいわ。なんべんでも言
っ
てやる。本当に陰険。
でも周囲の評判はあの女の方がいいのよね。ど
っ
ちか
っ
ていうと私はキワモノ扱いで、男連中から面白がられていた
っ
てのが正直なところだけど。あの女はその点、男連中には受けが良か
っ
た。ボスのお気に入りで周囲も気を使
っ
ていたし。上司に目をかけられてはいたものの、所詮は派遣の私とは比べ物にならなか
っ
た。
それはいいの。
あの女も私も、社内じ
ゃ
一・二を争う知性派で鳴らしていた。女の子でそういうタイプ
っ
ていなか
っ
たから、まあ目立
っ
たわよね。女の子はたいていカレ
ッ
ジ系だけど、私もあの女もユニバー
シテ
ィ
系だ
っ
た。うろち
ょ
ろしてる男連中の足元を掬うくらい、造作もなか
っ
たよ。
で、あの陰険女は、そこを衝くわけ。「学問の底が浅くて未完成だ」
っ
て。これ、どこがいやらしいか分かる?
学問
っ
て、そもそも完成することがあるの? どこまで行
っ
ても未完成じ
ゃ
ない? だから天下一の大学者だ
っ
ていわば未完成なわけよ。学問の深淵を思えばそり
ゃ
底が浅いでし
ょ
うよ。
それをわか
っ
てて、敢えて言
っ
てるの。「未完成だ」
っ
て。そこへ、私の態度だのなんだのを絡めて、いかにも調子こいたアホ女みたいなレ
ッ
テルを貼り付けようとするわけ。教養にコンプレ
ッ
クスを持
っ
ている連中はそれに乗
っ
か
っ
てさぞ溜飲を下げたでし
ょ
うよ。おまけに時間が経つにつれて、私を知
っ
ているひとたちは次々にいなくなる。あの女の言
っ
たことだけが真実みたいにして残
っ
ていくわけよ。
どう? 陰険でし
ょ
? それともこんなことを言
っ
ている私の性格が悪い
っ
て?
でも、そんなことはいいんだ。
問題はね、ポエトリー
に関してだよ。
私もあの女も、ポエトリー
に関しち
ゃ
ち
ょ
っ
とは知られてた。作るたびに評判にな
っ
たしね。もちろん、基本テクニ
ッ
クのオマー
ジ
ュ
やリスペクトも駆使して。そういうところについてもあの女はねちねち言
っ
てたけどね。何様だよ、ま
っ
たく。
でもね、敵わない子がいたんだ。年下だけどね。学歴とか、なんてことはないの。ついでにル
ッ
クスも普通。美人でも何でもない。でも、むち
ゃ
くち
ゃ
モテたの。すごいでし
ょ
? うわ
っ
、ち
ょ
っ
と!? 前のめりにならないでよ、ばか。こら、ヘンなこと考えたでし
ょ
。残念でした。そういうのじ
ゃ
ない・・・と思う。たぶん。
その子がね、や
っ
ぱりポエトリー
、やるわけよ。うまいのか
っ
て? す
っ
ごいの。ああいうの見てると、オマー
ジ
ュ
や教養に頼
っ
ている私たちが惨めになるくらい。「虜にする」
っ
て、分かる? 理屈抜きで心に入
っ
てくる、みたいな。理屈で良いとか悪いとか言
っ
ていられるうちは理性があるわけじ
ゃ
ん? そういうのす
っ
飛ばして言葉が入り込むわけ。あれを見せられたら、そり
ゃ
男は落ちるわよ。もともと、ポエトリー
っ
て、ラブのためにもあ
っ
たわけだからさ。読んだ側がくらくらしち
ゃ
うのは究極のポエトリー
なわけ。
正直に言うよ。私はその子には全然かなわなか
っ
た。私のポエトリー
を読んだ男が魅入られたみたいにな
っ
て私に額ずく、なんてことはついぞなか
っ
たしね。でもね、それを言うならあの陰険女だ
っ
て同じ。あの女、よせばいいのにク
ッ
ソ長いつまんない小説書いたわけよ、知
っ
てるでし
ょ
? その中にポエトリー
がいくつも出てくるの。
へ
っ
たくそ!
つまんない!
教養をまぶして捏ね上げたニセモノ!
それが最高のポエトリー
みたいにして書かれているから、もう、お
っ
かしく
っ
て。
哀れなもんね。どんなに社内的にぶいぶい言わせても、コメツキバ
ッ
タどもにヘイコラされていても、才能の限界
っ
てのは隠しようがないんだから。まあ、時間が経てばポエトリー
にも箔がつくし、そのうち勘違いされて持て囃されることもあるでし
ょ
うよ。だけどね、これは私のことも含めて言
っ
てやる。ほら、陰険女、そこにいるでし
ょ
? 私が何を言うか、こ
っ
そり聞き耳を立ててたでし
ょ
。そう、そこのアンタ、よく聞けよ。
アンタのそのポエトリー
で、一人でも男が落ちた? 一人でも我を忘れて縋りついて来た?
いないよね、そんな男。いるわけがない。
私だ
っ
てそうだよ!
どんなに勉強して、テクニ
ッ
クを磨いた
っ
て、絶対に届かない高み
っ
てのがあるんだよ。その子がいなければ気づかずにいられたかもしれない。でも、その子はにこにこしながら次々にすごいポエトリー
を書いていくの。私がどんなにしても書けない、魂を蕩かすようなポエトリー
。
アンタだ
っ
て気づいてたよね。本当なら、お得意の陰口でデ
ィ
スりまくりたか
っ
たよね。だけどさ、あれをデ
ィ
ス
っ
たら、そのまま自分の見る目がないことを証明することになる。馬鹿にされるだけ。だから、アンタはその子だけはデ
ィ
スれなか
っ
た。「素行はよくないけれど」みたいな余計なひと言を付け加えるのが精い
っ
ぱいだ
っ
た。でもさ、「素行がよくない」
っ
て要するにモテまく
っ
てた
っ
てことで、それはその子のポエトリー
の力なんだから、よく考えれば悪口にな
っ
てないんだけどね。でも、時間が経つうちにそのあたりも分かんなくな
っ
てくる。その子のことを、だらしない淫乱女、みたいに思う人も出てくるかもしれない。アンタ、そのへんも計算してたよね? ほん
っ
と、反吐が出そうなほど陰険だわ、アンタ。
ポエトリー
じ
ゃ
その子に勝てないのがわか
っ
て、アンタは小説に逃げたね。権威が大好きなアンタのことだから、バ
ッ
クア
ッ
プをし
っ
かりと取りつけて、名作として読み継がれる工作は怠りなか
っ
た。実際、そうな
っ