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嫉妬する理由
森™
 投稿時刻 : 2014.09.22 18:56
 字数 : 1059
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嫉妬する理由
森™


誰かのお腹が鳴た。

ところで、把握できない無数の島宇宙のなかで、相互理解の仕方も無数である事実は去ることながら、僕の心のなかにある事実を書き留めておきたい。
それぞれ作家性を持ち寄り、ビデオ会議を繰り返す日々。ビデオ会議といても顔を出す者もいれば、音声のみの者もいて伝達方法は様々。出版界の情報や創作の産みの苦しみ等を共有する。素晴らしいことだ、インタートの有効活用とはこういうことだ。遠く離れていたて僕たちは創作界でつながているんだ。
ビデオ会議のなかのひとり、男が旅に出た。旅とは素晴らしい、僕はその旅が彼にとてさらなる創作の糧になることを心から祈念した。
ところで、仄聞するところによれば、僕はそのビデオ会議で「嫉妬魔」という枠に属している。もしくはそういうふうに自分を演じているというほうが等しいし、そういう意味では僕はみんなを騙している。
インタートに本音を書いているか、否か。そんな不確かで意味のない疑問がインタートに現れて消えてゆく。手紙は本音なのか、ビデオ会議は本音なのか、もしくは旅の途中の出来事、酔て漏らした淑女の溜息が、歳下の男の頬に触れることが本音なのかということだ。
ビデオ会議内の男女が差し向かて酒を交わした。
全部、本音なのだ。同時に全部偽りなのだ。それぞれ把握している属性は幻想に等しく、ビデオ会議の男女は記憶が混ざて反転する共同幻想をみているに等しいのだ。激しくどうでもいいが、しかし落ち着いて考えてほしい。繰り返すビデオ会議の共同幻想を破たかのような虚実、正体のようなものが当事者同士で共有される虚実を。
僕はビデオ会議上の彼と、旅上の彼は、同一人物ではないと錯覚するくらい乖離すること(作家独特の変態性)も、そして迎える淑女もそれに調和することも想定していた。僕はこれからもその虚実を頭の片隅に記憶しながらビデオ会議に出席するのだろう。史実上、ビデオ会議から離脱し消えた星を、僕は思い出したりする。もしかするとこの僕の複雑な嫉妬心を包んでくれるのは、その星たちなのではないのか。
僕は上京したとき、誘うこともできなければ誘われることもない、ビデオ会議内の誰にも声をかけられずかけることもない、孤独を楽しんでいたことをここに告白する。
電車の軋む音は、彼と僕のなかでは響き方が違うということなのだ。

「誰だろう、お腹鳴てる?」
「あ、恥ずかしい……ちです」
「うふふ」
「今、ふとんで携帯をお腹に乗せて参加してるんですよ」
「へ
「さき、ご飯食べたので消化音です……
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