第21回 てきすとぽい杯
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確率は十分の一?
投稿時刻 : 2014.09.21 07:34
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確率は十分の一?
三和すい


 誰かの携帯電話が鳴た。
 そいつはハとして携帯電話を取り出すが、表示された名前を見て肩を落とす。
「鈴木からだ」
「ほとけほとけ。どうせまたつまらんことでかけてきたんだろう」
「そうだな。それよりもこちの方が問題だ」
 部室にいた全員の目が、机の上に並べられた十個の箱に向けられる。
「どれが『ハズレの箱』なんだ?」
 その問いかけに、答える者は誰もいない。
 いや。正確に言うと答えられない。どれが『ハズレの箱』なのか、この場にいる全員が知らないからだ。
「あと十分、いや五分か……
 ステージまでの移動と準備の時間を考えると、あと五分で『ハズレの箱』を探し出さなければならない。
「誰なんだよ、こんなゲームを考えたのは」
 この箱を使うのは、学祭のイベントで行うゲームの一つだ。ステージ上で出場者がクイズやちとしたゲームで競い合う、サークル対抗のイベント。人数が多いサークルが参加しているので、ステージの方から大きな歓声が部室の中にまで聞こえてくる。
 そう。もうすでにイベントは始まているのだ。
 それなのに、イベントのゲームで使う箱の準備ができていない。
 箱はあるにはあるのだが、どれをステージに持ていけばいいのか、この場にいる全員が知らなかた。
 箱を開ければ良さそうなものだが、そうもいかない。『ハズレの箱』は開けると中から小麦粉が吹き出す仕掛けになている。もちろん一度開ければ使えなくなてしまう。
 一番手取り早いのは、箱を作た奴に聞けばいいのだが、そいつは祖父が亡くなり田舎に帰ている最中だ。試しに携帯電話にかけてみたが電源が切られている。
「急に出られなくなるサークルさえなければ……
 そうすれば、中身を知らなくても箱を全部持ていけば済む話だ。どれか一つが『ハズレの箱』で、ゲームは無事終了。
 しかし、もし減らした箱が『ハズレの箱』だたら……
「重さはどれも同じなんだよな」
「確か持た感じでわからないよう調整したて言てた」
「やぱり、これは『ハズレ』じないだろう? どう見ても弁当箱だぞ」
「そう言えば、鈴木の弁当箱に似ているような……
「けど、こちはアイスの箱だぞ」
「このテ箱の方が怪しくねーか?」
「どれがハズレか本当に誰も聞いてないのかよ」
 話し合ても答えは出ない。
 どうする? どの箱を抜く?
 携帯電話の音が鳴り続ける中、時計の針がカチカチと進んでいく。
 意を決したように、一人が机の上の箱に手を伸ばした。
 と、その時、
「おい、何で電話に出ないんだよ
 部員の一人――鈴木が部屋に入てきた。
 その手には箱が一つ。
「悪。次のゲームで使う『ハズレの箱』、弁当と間違て持ていてた。知らせようと思て電話かけたのに、何で誰も……

 残されたわずかな時間、全員で鈴木を袋叩きにした。
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