てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
来たれ てきすとぽい作家! 800字小説バトル
〔
1
〕
…
〔
9
〕
〔
10
〕
«
〔 作品11 〕
»
〔
12
〕
〔
13
〕
…
〔
15
〕
白白
(
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
)
投稿時刻 : 2014.10.26 23:41
字数 : 800
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票
白白
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
まどろみの中から目覚めると、駅舎は砂浜にあ
っ
た。
あたりがかすかに青白く染ま
っ
ている。薄暗い空間が、波の押せては返す音で満たされていた。
暗がりの中、幼い子どもがこちらを見ていた。
――
お母さまを迎えに来たの
そう言
っ
て走り出した小さな背中を、私は追
っ
た。
セー
ラー
服に身を包んだ少女を見つけた。風が吹いて、肩まである美しい黒髪がさらりと靡いた。私は黙
っ
てその背中に近づく。足元に飛沫がかかる。その冷たさに、今が冬であることを知
っ
た。
――
娘さんが探していたわ
話しかけると、少女は初めて私に気付いた様子で、しかし驚きより先に嫌悪をあらわに、眉を顰めてこちらを見や
っ
た。
――
子どもなどいないわ
――
でも、あなたを迎えに来たと言
っ
ていたわ。四歳ほどの女の子よ
ますます少女の眉が寄
っ
た。
――
子どもなどいないわ。四年前に、産まずに殺したもの
私たちの足元に、またひどく冷たい水が押し寄せた。今までより大きい波は、私たちの足首まで浸し、勢いよく引いてい
っ
た。
――
この海で?
問うと、険しか
っ
た少女の顔が、くし
ゃ
りと歪んだ。
――
産んではいけないと言われたのよ。産まなければ、私たちは関係を続けられるし、いつか一緒になろう
っ
て、言
っ
てくれたのよ。だから、私は、なのに、どうして、先生、先生
……
ほろり、と涙が零れて、頬から顎から滴り落ちた。それが再び押し寄せた波に飲み込まれた。その途端、少女の姿は霧となり消えた。
水平線の向こうがわずかに赤みを帯び始めた。しばらくすると、穏やかな波を割
っ
て、轟音と共に飛沫が上がり、塩水に濡れた汽車が浜に乗り上げた。汽笛が響いた。
――
お母さまは?
現れた女児が不安げに首を傾げる。
――
お母さまはまだこちらへは来られないの。さあ汽車にお乗りなさい
――
冷たいのは嫌。二度と嫌
――
大丈夫よ、もう寒くないわ。次の駅にはお父さまがいら
っ
し
ゃ
るわ。そうしたら、いつかお母さまがや
っ
てくるまで、二人で待
っ
ていなさいね
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票