てきすとぽい
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来たれ てきすとぽい作家! 800字小説バトル
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月蝕
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2014.10.08 21:06
字数 : 800
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月蝕
茶屋
それが起こ
っ
たのは少し昔のことかもしれない。
月蝕が起こ
っ
たことは多くの人が見て、覚えている。駅前広場では立ち止ま
っ
て空を見上げる人が多くいた。
でも、皆が忘れていることもある。
月は消えたままだ
っ
た。
月が消えた瞬間、魔界の門が開かれた。
魔界との接触により起きた大災害、魔物による殺戮。
多くの人がなすすべもなく死んだ。
だが、高校生達が世界を救う力に目覚めた。
その中に彼もいた。
病弱で入退院を繰り返すような少年だ
っ
たが、幸か不幸か彼も力を手にしていた。
彼らは戦
っ
た。
魔族、そして世界の破滅をもくろむ邪神。
多くの仲間を失い邪神を討ち果たしたとき、生き残
っ
た仲間は彼と、一人の少女だけだ
っ
た。
ボロボロの世界とわずかに生き残
っ
た人類。
壊れてしま
っ
た世界。
だが、彼の顔は晴れやかだ。
まだ希望はあると、彼は言
っ
た。
己の命を引き換えにした大魔法で、世界を元に戻すのだと。
だが、少女はそれを止めようとした。
確かに世界は元に戻る。
だが、すべてがなか
っ
たことになる。魔物の襲来も。仲間たちとの戦いも。恋心も。
少年の死を除いては。
だから、この世界でまた新しく始めればいいと、少女は言
っ
た。
彼は静かに首を振る。あまりにも人が死にすぎている。
制止を振り切り、彼は大魔法を発動する。
「絶対に
……
絶対に忘れないから!」
大魔法発動の轟音の中、そんな少女の声が、聞こえたような気がした。
気が付くと彼は病院にいた。
あの日、すべてが始ま
っ
た日、彼は病院の窓から月蝕を見ていたのだ。
月が再び淡い光を発し始めたのを見守りながら彼は静かに息を引き取
っ
た。
全てが元通り、何事もなか
っ
たかのように動き始めた。
彼とともに戦
っ
た仲間たちも、戦いの記憶などなく日常に戻
っ
ていく。
そう。
何もなか
っ
たのかもしれない。
ただ、月蝕の日、一人の少年が死んだだけ。
けれども、ある少女は月蝕が起きるたびに何故だか涙が溢れて止まらないという。
その理由は彼女自身にもわからない。
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