Birth & Rebirth
予知能力の正体は、並行世界からの死者の召喚。おばあ様から口伝された第一奥義は衝撃的だ
った。時間軸の違う並行世界の未来は、この世界の過去と“距離”がそう変わらないんだって。でも中には殆ど同じ道を辿る世界があるから、そこから死者を招けば“未来”が分かっちゃう。大変なのは無限に近い選択肢の中からよく似た世界を探り当てることのほうで、それが奥義として受け継がれてきたのだという。
……で、魔族に侵攻されたもんだからその第一奥義を使って対策を練ろうとした。一生に三度使えれば御の字という奥義の結果やってきたのは、「私が普通の結婚をした未来の息子」。正直絶望しかけたけど、実は奥義は成功していたんだ。
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『……だから遺伝上はあなたの息子ですが、この世界には父親の違う“兄弟”が生まれるべきなんですよ』
それが、並行世界の私からの遺言なのだという。死者に自分の体を譲り渡す第二奥義を使って今と未来を二重に救うその方法。一番の衝撃だった。
勇者の子孫である雄一くんでも自己犠牲呪文を使わないと魔王を倒せない。けれど魔王には既に子供がいるので未来の侵攻までは防げない。そうして人類が滅びた世界からやってきたのが彼であり、そうならないように雄一君と私が入れ替わる。そこまではいい。問題は、それだけでは勇者の血脈が残せないこと。ただの女になってからでは遅い。だから急いで、子供を儲けてもらう必要があるのだけど……。
「なんで私が……?」
お酒で酔わせて襲えだって!? “我ながら”なんとはしたない!
『勇者が自分で息子を生み育てる。これ以上の世代交代はないだろうとの結論です』
それはまあ……そうかもしれないけれど。
『それに、勇者の方への淡い恋心があったはずだと母が申しておりました』
一応は“息子”の彼にべらべらと……。
『若いお母さんの姿、声……嬉しかった。できれば直接お話ししたかったですが、筆談にて。さようなら、どうぞお元気で』
<了>