第24回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・白〉
〔 作品1 〕» 2  12 
緋色の
投稿時刻 : 2014.12.13 22:40
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緋色の
犬子蓮木


「なんで殺したんですか?」
 まだ若い青年が死体の前で怯えている。
「そういう契約だたでしう。契約書を確認する?」
 私は殺し屋だた。
 そして依頼主の青年と契約した通り、ある人間を殺した。それなのに、なぜ彼はこんな風に取り乱しているのだろう。
「だて、この人は違うて」
「はあ」
 私はため息をはいた。
「違うとか違わないとかそれにどんな意味があると思てるの?」
 話の流れはこうだ。
 依頼主はある怨み(ここで語るほどの大層なものではない)があて、タートを殺してほしいと私に依頼した。私は彼と金銭を報酬とした契約を結び実行した。その契約には殺すときには依頼主の前でというオプシンも付いていたので、その通りにしたというわけだ。
 ただ、依頼主にとて問題だたのは、この転がているタートがしている指輪だた。どうも本来タートが持ているものとは違うものだたらしい。対になるうちの片方で、よく似ているがはめられている宝石が違う、このタートは紅い石の指輪だたが、本来、予定していたタートは白い石のものらしい。そして、このタートが私に殺される直前にそんなことを話したものだから、依頼主が混乱してしまたというわけだ。
「私はこいつを殺してほしいと依頼を受けた。そして殺した。それはあなたの望んでいた人間とは違ていたかもしれないけれど、それは指定を間違えたあなたの責任。違う?」
 ちんとお金を払てくれるんだろうか。今年もよく働いた自分へのクリスマスプレゼントとして買いたいものがあるんだから契約通りのお金はもらわないと困る。
 彼はまだ混乱しているようだた。
 罪のない人間を自分の指示で殺してしまたのだから仕方がないのかもしれない。まあ、罪があても殺しちいけないんだけどね。法律上は。
「あなたにできることを教えてあげましうか」
 私の言葉に彼はすがるような目を見せる。
「私に今の分の報酬を払う。私に本当のタートを殺す依頼をする。私は実行する。あなたはまた報酬を払う。以上」
 簡単なことだ。他になにかあるというのなら教え欲しいぐらい。もちろん自首なんてものは選択肢にないし、報酬を払わないなんてこともないだろう。今回の分だけ払て、もうあきらめるというのはありといえばありだが、そんなつまらない人生を私は彼に歩んでほしくはない。人生ていうのはもと刺激に満ちてないとダメでし
 近くのテーブルにカフラテが入たカプが置かれていた。もうさめてしまているようだけど、さきの争い中によくこぼれなかたものだ。まあ、一瞬で殺したからだろうけど。
 私はカプをとて、それから死体のところでしがみこんだ。
「なにをしてるんですか?」
 依頼主がふるえた声で話しかけてくる。
「ラテアーて知てる?」
 私は死体の手を持ち上げてナイフで手首を切た。まだ固まるほどは時間が経てはいない。指先を血が伝うようにして、床においたカプの上に垂らした。白ぽかたカフラテが紅く染まていく。
 ぽたぽたぽた。
 ナイフの先でかるくみなもをすべらせるとくるくると紅いらせんができた。
「うーん、絵はどうやて描くのかわからないね」
 私はカプを持ち上げて、依頼主に微笑んだ。彼の前にカフラテを差し出す。
「どうぞ」
「え?」
「飲んで。それで元気つけてつぎ行こう、つぎ。ほら、ぐいと」
 私は彼にカプを押し付ける。なんとか受け取た彼の手をつかんで、そのまま彼の口元へ運ぶ。
 彼が目に涙を浮かべながら液体を口に含んだ。私が支えてた手をはなすと、カプも彼の手を離れて落ちて割れてしまた。
「あーあ」
 彼が崩れ落ちて、飲んだものを吐き出すようにゲーゲーしてる。
 私は彼のそばでしがんでやさしく背中をさすてあげながら、耳元でつぶやいた。
「では次の契約をしましうか」
 ハンコは血判とか素敵かもしれない、と私は思た。
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