第25回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動3周年記念〉
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夕暮れ姉弟
茶屋
投稿時刻 : 2015.02.14 22:42
字数 : 503
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夕暮れ姉弟
茶屋


「聞いてくれたまえ弟よ」
 改まていう姉の言動に不可思議さを覚えながらも、読んでいた本から目を上げる。
「なんだよ。改まて」
「実はだな」
 姉は不敵に笑うと、見下すような目でこちらをみてくる。
「なんだよ」
「ふふ、聞いて驚け、姉は今日だな」
「ささと言えよ」
「まあ、待て。そう急くな」
 もたいぶた様子に苛立ちを覚えながらも、本を閉じて姉の言葉にしかりと耳を傾ける。
「姉は今日告白されたぞ!」
「げ! マジで! 嘘だろ!?」
「ふふ、嘘ではないのだこれが」
「馬鹿な……
 正直いて信じられなかた。はきり言て姉は容姿端麗とは言いがたい。ましてや性格は……
「体育館の裏に呼び出されて告白されたのだ」
「随分本格的な」
「なんて言われたと思う?」
「そり、まあ、好きです、とか、付き合てくださいとか」
「そんなぬるい台詞じないんだなこれが」
「早く言えよ」
「こう告白されたんだ。
 マジで気持ち悪いからオレのことジロジロ見るのやめてくれる。俺、お前みたいな奴の事大嫌いなんだよね」
……
……
「姉ちん。チコあげる」
 夕暮れがやけに目に染みた。
 姉は強い人間だ。心のなかで泣いていても、涙は決して浮かべない。
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