てきすとぽい
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第27回 てきすとぽい杯
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水濡れ厳禁!小枝子ちゃん!
(
どろどろろん
)
投稿時刻 : 2015.06.20 23:43
字数 : 1298
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水濡れ厳禁!小枝子ちゃん!
どろどろろん
太陽の光がギラギラ照りつけてアスフ
ァ
ルトを焼き始める頃になると、僕はいつも小枝子のことを思い出す。
町はずれの小さな家に年老いた母親と慎ましく暮らしていた小枝子。無口であまり喋らない女の子だ
っ
たが、時折見せる笑顔は向日葵を思わせるほどに輝いていて、僕はそれが大好きだ
っ
た。
だからこそあの時の僕の浅はかな行動を思い出すと胸がどうしようもなく苦しくなる。
当時14歳だ
っ
た僕は水泳に夢中だ
っ
た。当然部活は水泳部だ
っ
たし、暖かくな
っ
てプー
ルに入れる時期になると毎日のように学校のプー
ルで泳いだ。思えば僕の人生で一番充実していたのはあの頃だ
っ
たのかもしれない。
小枝子は水泳部のマネー
ジ
ャ
ー
だ
っ
た。無口で何を考えているのかよく分からない子だ
っ
たが自分の役割はき
っ
ちり果たしたし、何より男臭い部活の紅一点で、しかも可愛か
っ
たので、部員から嫌われるようなことはなか
っ
た。
小枝子は毎日部活に来て僕たちが泳ぐのをいつも熱心に見ていた。毎日雑用して、僕たちの泳ぐところを見て、それで楽しいんだろうかと思
っ
て、小枝子は泳がないのかと聞いてみたけれど、寂しそうにふるふると首を振るばかりだ
っ
た。小枝子はき
っ
と金槌なのだろうとこの時の僕は思
っ
た。
僕は小枝子が好きだ
っ
た。部活が終わ
っ
た後、小枝子に俺でよか
っ
たら泳ぎ教えようか、と提案してみた。小枝子は薄く笑
っ
て首を振る。しかし僕は、泳ぐの
っ
てと
っ
ても気持ちいいんだぜ、と食い下が
っ
てみた。あんなに寂しそうに首を振るんだからき
っ
と小枝子は泳ぐことに興味がない訳じ
ゃ
ないのだと僕は思
っ
ていた。小枝子は目をパチクリさせて泳ぎの楽しさを熱弁する僕を見る。それから、じ
ゃ
あ少しだけ、と了承してくれた。
僕と小枝子は二人
っ
きりでプー
ルに入
っ
た。小枝子の水着姿を見るのは初めてで少しドギマギしてしま
っ
て上手く小枝子のことを見られなか
っ
た。小枝子はそんな僕を見てクスリと笑う。
じ
ゃ
あ、まずバタ足から、そう言
っ
て小枝子の手をそ
っ
と掴む。壊れそうなくらいに柔らかか
っ
た。
僕の手を掴んでバタ足を始める小枝子。スラ
っ
と伸びた足は水泳部の男どもとは全く違
っ
ていてとても綺麗だと思
っ
た。
小枝子は飲み込みが早くて1時間もすると自力で10m程泳げるようにな
っ
た。そろそろ陽も傾いてきたので今日はこの辺にしておこうと小枝子に、そろそろ上がろう、と声をかける。すると小枝子は、
「泳ぐの
っ
て気持ちいいね。ホントに君の言うとおりだ。や
っ
てみてよか
っ
たよ」
そう言
っ
てニ
ッ
コリと向日葵みたいに笑うと、その場で、文字通りサラサラと水に溶け始めた。
僕は驚きのあまり声も出せず、玉のように綺麗な肌がキラキラした粉にな
っ
て水に溶けて行くのを見ていた。差し込んだ夕日に照らされて一層輝いて見えた。
思わず見とれてしま
っ
ていた僕がハ
ッ
と気が付くとそこにはもう水着とキ
ャ
ッ
プとそれからゴー
グルしか残
っ
ていなか
っ
た。小枝子は跡形もなく消えてしま
っ
た。
僕は水に浮いたそれらを回収して、仕方ないので自分のカバンに詰めて持
っ
て帰ることにした。
テクテクテクテク、一人で歩いて家に帰る。途中であまりの夕日のまぶしさに目が染みて少し涙が出そうにな
っ
た。
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