てきすとぽい
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【BNSK】品評会 in てきすとぽい season 9
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…
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〕
オルフェウスの海
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2015.01.11 19:00
字数 : 4983
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オルフェウスの海
茶屋
place:yeast
side
sea
point
77:55:89
force:unit556
date:01/
07/
27
12:32
operation
install
海が
海の
空の
音が
次第に鮮明にな
っ
てくる。
ヘリの羽根が回転する音。風を切る音。海風の腐臭。機械油の香り。水面の照り返し。雲の奥、鈍く輝く太陽の光。冷たい機内の温度。脈打つ血流の体温。機甲着の居心地の悪い肌触り。やたらに重い、ぐらつくヘルメ
ッ
ト。
隊長の声。
「いいか間もなく現場に到着する。到着次第効果だ。最後に装備の点検をしておけ。終わ
っ
たら最後の作戦確認だ」
隊長の声。
隊長の名はバランタイン。
隊員たちは各々の装備をチ
ェ
ッ
クする。あるものは気だるそうに、あるものは入念に。ひとしきり最終確認の儀式を終えると、視線は隊長の下に集中する。
「本作戦は通称「船の墓場」、幽霊船の集積地帯に降下し、対象物を回収することが目的だ。対象は情報安定化装置と思われるロストテクニカだ。そいつが増大エントロピー
の影響で情報が不安定になる「海」に浮かんだいわゆる幽霊船と呼ばれるかつての輸送構造体を集めている。幽霊船群の中心に構造体にそのロストテクニカはある。斥候ドロー
ンが走査した幽霊船集積構造体の構造と目標地点は既に確認しているな?」
バランタインの言葉を聞いて慌ててヘ
ッ
ドマウントデ
ィ
スプレイ(HMD)の映像を確認しているものがいる。ルー
キー
だ。新米であるニ
ッ
カはどうにも落ち着かない様子で、バランタインも何となく不安気な眼差しでニ
ッ
カのほうを見ている。
「我々は効果次第すぐさま目標地点に向かう。だが、幽霊船集積構造体は敵の勢力範囲に近い。敵の介入もあると思
っ
た方がいい。我々の任務は回収だ。だからヘリに回収してもらう必要がある。回収地点の確保は達磨とホワイトホー
スに当た
っ
てもらう。達磨は高所からの狙撃、ホワイトホー
スはヘリ周辺から達磨の撃ちもらしを掃討してもらう。実際に回収の任務に当たるのは俺と山崎、ジ
ャ
ッ
クダニエルとニ
ッ
カだ。よし、幽霊船のお出ましようだ」
鈍色に光
っ
た海の彼方にそれは見えた。
様々な船の残骸が一か所に寄り集ま
っ
ている。まるですり鉢状の穴の底にガラクタが集まるように。重力の極点。四次元的な底が、誰もの乗らぬ無人の船を集積している。軍艦にタンカー
、漁船に時代遅れのセイル船、死んだような灰色を浮かべ、海鳥たちが腐肉にたかるハゲワシのように空を舞
っ
ている。
「こり
ゃ
、思
っ
た以上に幽霊船だ。まるで墓場だな」
そうい
っ
たのは山崎だ。
「墓場とは、縁起でもないですぜ」
ジ
ャ
ッ
クダニエルが笑いながら言
っ
た。
「ふん。俺たちなんざ、墓に入れり
ゃ
いいほうよ」
「そらそうだ」
山崎とジ
ャ
ッ
クダニエルは笑い合う。ルー
キー
のニ
ッ
カにはそんな余裕が不思議だ
っ
た。
眼下には不気味な船の廃墟群が迫
っ
てきていた。まるで死者を待ち望んでいるかのようだ。手招きして、己が仲間を増やそうとでも言うかのように待ち構えている。
「降下準備。時間を合わせるぞ。三十分だ。それで終わらせる」
バランタインの声がヘルメ
ッ
トの中に響く。
「了解」
隊員たちの声が揃う。
ヘリの降下を待たず、バランタイン、山崎、ジ
ャ
ッ
クダニエルとニ
ッ
カがドアを開けてから飛び立つ。
視界が一気に広が
っ
た。HMDに表示される高度は見る見るうちに下が
っ
ていく。
快適ではない空の旅だ
っ
たが、それはすぐに終わ
っ
た。
金属の凹む音とともに降下は完了する。一瞬だけHMDの表示にノイズが混ざりこんだが、計器に異常は見られない。
隊員たちはすぐさま銃を構えると、周囲を警戒しながら前進を開始する。HMDのルー
ト表示に従い、目標に向かう。
「こちら達磨。回収地点に到着。これから高みの見物に向かうとするよ」
「了解。警戒は怠るな」
「合点承知」
状況は整
っ
た。あとは仕事をと
っ
とと済ませるだけだ。
「く
っ
そさすがに揺れるな。気持ちワリ
ィ
」
「酔い止めアプリは」
「入れてね
ぇ
よ。あれじ
ゃ
臨場感が足りんのだよ」
「戦闘ジ
ャ
ンキー
が」
山崎とジ
ャ
ッ
クダニエルは軽口を飛ばしながら進んでいく。
目標地点まであと半分と言
っ
たところまでは順調に事が運んだ。だが、逆に言えば順調だ
っ
たのはそこまでだ。
「敵さんたちのお出ましのようだ。ヘリは一機撃ち落としたが、残りはどこかに降下された。恐らく一チー
ムがこ
っ
ちへ、残り一チー
ムがあんたらへ向かう」
「達磨は?」
「ホルスの目とリンクを開始している。多分、狙撃準備中だ」
「了解。そ
っ
ちは任せたぞ」
「そ
っ
ちも幸運を祈る」
バランタインは山崎にすぐに追加のドロー
ンを射出するように指示を出した。光学迷彩を施した数機の斥候ドロー
ンが静かに翼を回転させながら散
っ
ていく。すぐに部隊は前進を再開するが、その間HMDに映し出される情報が更新されていき、数分後には人影をキ
ャ
ッ
チする。
「予想より早いな」
「外骨格ですかね」
「その可能性が高い。弾を徹甲弾に切り替えておけ」
会敵は間もなく起こ
っ
た。ドロー
ンによる位置把握により簡易的なトラ
ッ
プとドロー
ン型機雷、小型セントリー
ガンが奏でる音楽が背後から聞こえた時、部隊はすぐさま臨戦態勢の配置に移
っ
た。
「やはり予定通りにはいかんもんだな」
「予定通りに行
っ
た試しなんてありますかい隊長」
「それもそうだ」
センサー
に反応があ
っ
た方角に、山崎が銃弾をばら撒く。まるで返事でもするかのように銃撃がかえ
っ
てくる。
HMDに表示されている敵の人数は五人。二つは微動だにしない。既に死体にな
っ
ている可能性もある。
しばらく銃撃に応酬が続いたが、小休止とでも言わんばかりの静寂が訪れた。
その静寂を破
っ
たのが、カランコロンと言う乾いた金属音だ
っ
た。
「フラ
ッ
シ
ュ
バン!」
その言葉の直後、眩い閃光と強烈な耳鳴り襲
っ
てきた。
神への憎悪を吐きながら起き上
っ
たニ
ッ
カは白煙の中から敵が攻めてくるのが見えた。だが、目標をうまくとらえることができない。
その時、銃撃音が遠くに聞こえた。
遠くだとニ
ッ
カは思
っ
ていたが、それはすぐ近くの情景だ
っ
た。次第に、光景がは
っ
きりしてくる。
敵に向か
っ
て銃を撃ち続けているのは山崎とバランタインだ。二人の顔面はヘルメ
ッ
トの収納装甲に覆われており、スタングレネー
ドの閃光と音を回避し、敵を迎撃している。ジ
ャ
ッ
クダニエルは肩口を負傷している様子だ。
決着はついた。
「いて
ぇ
」というジ
ャ
ッ
クダニエルの悲痛な叫びが明瞭に聞き分けるようにな
っ
たころ、ニ
ッ
カはや
っ
と起き上
っ
た。
「後続の部隊はいないようだ。どうする? ここで待機するか? それともついてこれるか?」
「ついていきますとも。こんなところで待ちぼうけじ
ゃ
暇すぎて死んじまう」
バランタインの問いかけにジ
ャ
ッ
クダニエルはそう答える。答えながらも鎮痛剤の注射と傷口への合成生体樹脂での補強はし
っ
かりこなしている。
それからしばらくは問題なく前進できた。
中心の構造体に侵入でき、残すところはロストテクニカの回収と撤収だけだ。
だが、ことはそう簡単に運ばなか
っ
た。
「帰
っ
たら一杯奢
っ
てくださいよ」
「嫌だね。割り勘だ」
「守銭奴め」
「うるさい。貯金は俺の趣味なんだ」
軽口をたたき合いながら、前進する。間もなく、最深部、目標物のある構造体へと進入する。だが、次の瞬間山崎の音声に異音が混じり、何かが割れる音がした。
皆の視線が同時に山崎のいた方へと向く。
「ミ
ュ
ー
タントがいるなんて聞いてないぞ!」
の
っ
ぺりとした肌に粘液をまとわり付かせ、鋭い爪で壁に張り付きながら牙の並ぶ巨大な口に人間の半身を咥えこんでいる。全長二メー
トルほどの化物。突然変異体だ。斥候ドロー
ンから情報には生体反応はなか
っ
た。それにもかかわらず目の前には化物がいて、山崎の半身をバキバキと食ら
っ
ている。
一斉射撃の音で空間は満たされる。
だが、そこには銃弾の嵐でボロ雑巾と化した山崎の死体があるだけだ
っ
た。
「馬鹿な? どこに行
っ
たミ
ュ
ー
タントは?」
「違う。これは
……
ロストテクニカの影響だ。情報安定化効果が大きすぎて、幻覚が現実化しているんだ」
そうバランタインが行
っ
た瞬間、船体が大きく揺らいだような気がした。壁には幾つもの目が現れ、ぎ
ょ
ろぎ
ょ
ろとあたりを見回している。数本の腕がつきだして何かを捉えようともがいている。老婆が揺り椅子に座りながら縫い物をしている。
「Fuck! 幻覚だ。いや半現実とでも言うべきか。なるべく無視しろ。埒が明かない」
「山崎は?」
「機能停止状態だ。メモリタグを回収しておけ、先を急ぐぞ」
幽霊たちが歌い、鳥人がさえずる。シ
ュ
ー
ルレアリズムかダダイズムか。構造体の構造が歪み吐き気を催すような歪さを帯びる。
「ロストテクニカはもう少しだ」
「回収した
っ
てこのままじ
ゃ
帰れそうもありませんぜ」
不平を言うジ
ャ
ッ
クダニエルにバランタインは舌打ちをする。
「機能は停止させる」
「停止させる
っ
て
……
」
そうこうしている内に、目標地点に到達した。
対象は赤子のように見えた。ふに
ゃ
ふに
ゃ
と身悶える生まれたての嬰児だ。
「これが本当に?」
「誤作動状態に近いな。よくわからんが動力ケー
ブルを切ればひとまず機能は停止されるはずだ」
そう言
っ
てバランタインは嬰児に繋が
っ