てきすとぽい
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【BNSK】月末品評会 inてきすとぽい season 2
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…
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«
〔 作品6 〕
悲しい嘘
(
muomuo
)
投稿時刻 : 2014.04.30 23:49
字数 : 2197
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悲しい嘘
muomuo
サイドテー
ブルに、ぽつんと残された私の携帯電話。
ガラケー
の、今はもう使
っ
てなか
っ
たヤツ。
「どうせ誰からもかか
っ
てこないし、それでいいから貸して」
……
とせがまれて、
香住ち
ゃ
んに貸してたものだ
っ
た。
「君か、海ほたるが見たい
っ
て言
っ
た娘は?」
急に声をかけられた。ほんと、急に。
驚いて振り向くと、脳外科の高梨
っ
てセンセ。確か外来種。
あんまよく知らない。冴えない中堅
……
っ
てほどの年でもないはずだけど、
カンフ
ァ
レンスでも、いつもそんな雰囲気の人。
「
……
は? いえ、言
っ
てませんけど」(
……
何の話よ?)
感傷を邪魔されて、気分を害したワタシ看護師。23歳。彼氏ナシ。ちなみに外村春美。
「そうか。いや、ならいいんだ」
ま
っ
たく。なんなんだか。
また忙しくなる。そうしたら確実にこの気持ちも消えていく。
だから、そうなる前に、し
っ
かりお別れしたか
っ
たのに
……
。
◆
To:
subject:
3月8日(土)、晴れ
いつも楡の木の下で、夜の寝息を楽しむように
小声で鳥たちと話す人だ
っ
た。
ベンチの周りには誰もいない。窓越しに、き
っ
と私一人が見つめている。
誰も先生の優しい顔には気づかない。
世界を二人占めしているような、時間。
いつからだろう、この気持ち
……
そんなふうに悩む必要はない。
出会
っ
たあの日に、それは始ま
っ
たのだから。
この使えない携帯電話で、今日から記録していこう。
私の体が使えなくなる、その日まで
……
。
16:05
|
2014/
03/
08
To:
subject:
3月9日(日)、曇り
今日は検査の日。検査担当の先生と、堂々と会える日。
だから哀しくない。
どうせ結果は悪か
っ
たに決ま
っ
てる。
だから先生のへたくそな嘘が、また聞ける。
それが一番いい薬。
私にはそれが一番
……
あ
~
あ、楽しみだな。
11:23
|
2014/
03/
09
To:
subject:
3月14日(金)、晴れ
嘘のほうがいいな。
ほんとのこと
っ
て重すぎる。
検査結果のことは、たぶん嘘。
よくな
っ
てたはずがない。
それより
……
先生が、春美ち
ゃ
んのこと好きだ
っ
た。
私に、コク
っ
てきた。
20:31
|
2014/
03/
14
To:
subject:
……
き
っ
と、あれが先生の優しさ。
生きる“よすが”?
……
にでもなれば
っ
て、
コイバナを選んだだけなんだよね。
私が、見舞いの一人もない身の上だから、
自分のことは話したがらないだろう、
っ
て。
せめて、先生自身の話でも
っ
て
……
。
無理しち
ゃ
っ
てさ。
作り話じ
ゃ
、ないよね
……
。さすがに。
00:18
|
2014/
03/
15
To:
subject:
3月22日(土)、雨
うん。応援しよう。
私は向こうで待
っ
てればいい。
あの世で告白するんだ。若い姿のままでさ。
だから、春美ち
ゃ
んにゆず
っ
てあげる。
もしかしていま、
……
これ読んでるかな?
「ま
っ
かせ
っ
たぞ
~
」
……
なんか、大人にな
っ
たカンジ? ふふ
……
人はこうしてオンナになるのだよ、春美くん。
19:27
|
2014/
03/
22
To:
subject:
3月23日(日)、雨
一目惚れ、
っ
すか
ぁ
~
。
それだと、立場が弱くなるんだよね
ぇ
(経験者談)。
てか、お二人さんはさ
ぁ
、
私よりだいぶ前に会
っ
てるはずでし
ょ
?
……
ずいぶん長患いですな、旦那も。
ま、春美ち
ゃ
んもそこそこかわいいけどさ。
先生のお年頃の男性で、そんなことあるのかな?
う
~
ん。なんかち
ょ
っ
と、イメー
ジが違うけど。
……
ま、いいでし
ょ
。おねいさんにま
っ
かせなさい。
16:52
|
2014/
03/
23
◆
「あなたが一番見たいものは?」
シー
クレ
ッ
トフ
ォ
ルダのパスワー
ドが、変わ
っ
てる
……
!
夜勤明けの倦怠感が一息ついて、ふと、あの携帯電話を取り出した時のことだ
っ
た。
まだベ
ッ
ドから飛び起きる体力があ
っ
たこと以上に驚いたのは、
直感的にそれが意味するところが分か
っ
たからだ。
もちろん、興奮でざわついてきたし、すぐに
……
指が動いてた。
「う、み
……
ほ、た、る」
そういえばこんな入力方法だ
っ
たな。もどかしい
……
。
「
……
!」
や
っ
ぱり、保存フ
ォ
ルダに未送信のメー
ルがいくつも残されてる。
自分で書いた覚えは当然ないし、日付から言
っ
ても明らかに
……
香住ち
ゃ
んだ。
◆
To:
subject:
3月25日(火)、晴れ
今日は、先生に魔法の呪文を教えてあげる。
「これでダメだ
っ
たら、ダメだから」
っ
て。
……
春美ち
ゃ
んは、なんて答えるのかな。
いや、それはもちろん、最初は「
……
え?」とかだろうけど。
OK?
それとも
……
NG?
私の代わりに先生と一緒に、見てきてくれる?
……
ねえ、これ
……
読んでるんでし
ょ
?
あ、でも
……
最悪、気づかないまま終わるかもか。
まあその時はその時だね。
運命の神様に、恋のキ
ュ
ー
ピ
ッ
ドが負けた、
っ
てことで。
……
じ
ゃ
あ、もう一度言
っ
ときますか。
ど
っ
ちを選ぶのも、もちろん春美ち
ゃ
んの自由だけど
……
「ま
っ
かせ
っ
たぞ
~
」
10:45
|
2014/
03/
25
◆
読み終えて、涙している自分。
香住ち
ゃ
んの想いが、その意味が、全部分か
っ
たから
……
普通に泣いてた。
……
なんか、神様は残酷だな
っ
て、思
っ
た。
彼女は絶望もせずに、生き続けていたんだ。文字通り、独りで。
強い子だと、改めて思
っ
た。ほんと、大人の女性だ
っ
たんだ
っ
て
……
。
もちろん、答えは決ま
っ
てた。香住ち
ゃ
んも、分か
っ
てた答えだ。
き
っ
と、許してくれると思う
……
。
私の答えは
……
もちろん、「NO」だ。
高梨先生と付き合うなんて、できるはずもない。
だ
っ
てあの先生は
……
絶望的にブサメンだから。
<了>
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