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A Hole New World
 投稿時刻 : 2018.12.11 17:29
 字数 : 410
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A Hole New World
ゆきな|根木珠


 おれがむかしドーナツの穴だた頃、兄貴はマンホールの穴だた。
 弟は針の穴で、親父は吉見百穴だた。
 そう、いわゆる穴家系だたのだ。
 おれは兄貴みたいに立派になりたくて、もがいていた。若かたからよく無茶もした。
 自分の穴を大きくしようと広がてみたり、自分で自分を食てみたり、穴という穴にとりあえず入てみたりもした。どうやたら大きな穴になれるか、あの頃のおれには重要な問題だたんだ。
 ところがある日、人間の幼い女の子がおれの姿を見てこういたんだ。
「ドーナツは持ちやすいね」
 それを聞いておれは気づいた。
 そうか。
 この穴は、あの幼い女の子にはちうどいい大きさなのだ。
 ならばおれはこのままでいなければならないだろう。
 彼女のためにも、おれはおれのまま生きていこう……
 そう決意した瞬間、世界が揺れた。
 幼い女の子はおれを持ち上げると、おれの半分ほどをかじた。
 おれが最後に見たのは、幼い女の子の、とても幸せそうな笑顔だた。
 



 了
 
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