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てきすと怪 2015
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〔 作品11 〕
サカシマさんについて
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2015.09.20 23:55
字数 : 2684
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サカシマさんについて
茶屋
サカシマさんの噂である。
「これは友達が友達から聞いた話なんだけどさ」
紫煙漂う狭い居室の中で、車座にな
っ
て集う高校生が四人。
なので、多分、これはそのうちの誰かの高校生時代の話。
未成年のくせに一丁前にマイルドセブンをふかし、2.
7Lボトルの焼酎の周りにソフトドリンクを並べている。
赤ら顔で、話に花を咲かせる。
そのうちに夜もふけ、自然と怪談話にな
っ
たのだ。
「サカシマさん
っ
ていう人が昔な、事故にあ
っ
て死んだら死んだよ」
「え? その話、おれも知
っ
てるけど、自殺
っ
て聞いたけど」
「チ
ョ
ッ
ト待て、俺は殺された
っ
て話聞いたんだけど」
全員が顔を見合わせる。
「サカシマさんの話だよな?」
「そうだよ。この話をすると、三日以内にサカシマさんが来る
っ
てやつだよ」
「そうそう」
「俺もそれ聞いたことあるかも」
皆の話は合致している。ともかく、この話を聞いた三日以内にサカシマさんが来るという話だ。
「その話
っ
て、サカシマさん
っ
て女の人が公衆電話の中で暴漢かストー
カー
にめ
っ
た刺しにされて、その公衆電話の電話番号にかけるとサカシマさんが「今から行くわ」
っ
て言
っ
てくる
っ
ていう。この話を聞くと、サカシマさんから電話がかか
っ
てきてだんだん自分のいるところに近づいてきて三日以内にや
っ
てくる
っ
ていう話だよな」
「違うよ。そもそも、サカシマさんは男で」
と、もう一人が話始める。
曰く、サカシマさんという男が冬場に帰る途中、踏切で転んでしま
っ
た。打ちどころが悪か
っ
たのか、自力で起き上がれない。人通りの少ない道であ
っ
たことに加え、タイミングが悪か
っ
た。ち
ょ
うど電車が来たのだ。もう少し時間があれば這
っ
て踏切から逃れることができただろうが、踏切はすでにカンカンカンと嫌に響く音を鳴らし、赤のライトが不気味に明滅を始めたのだ。線路に振動が伝わり始める。サカシマさんは必死に逃げようとするが、なかなか前に進まない。そして、電車の光が彼を映しだした。雪で視界が悪か
っ
たこともあり、運転手はサカシマさんを見つけるのが遅か
っ
た。
サカシマさんは、電車に轢かれた。
おかしなことに、そこには下半身しか残
っ
ていなく、上半身はなか
っ
たのだという。
異様に寒い日であ
っ
たという。人の這
っ
たあとと血が残されていたが、それは途中で消えた。胴体の断面が氷付き、暫くの間、上半身だけで生きていたのではなかとも推測された。しかし、一向に上半身は見つからなか
っ
たのだという。
そのサカシマさんの上半身が今も、自らの下半身を探して彷徨
っ
ているというのだ。
そしてこの話を聞いたら三日以内にや
っ
てきて、「足をくれ」と言
っ
て這いながら追
っ
てくるのだとか。
「いや、それ違うくね? 別の話と混ざ
っ
てるんじ
ゃ
ないか? 俺が聞いたのはこんな話だよ」
サカシマさんという女子高生がいた。
夏休みが始まる前日の終業式の日、いじめられていた彼女は、屋上から飛び降りた。
ち
ょ
うど、彼女をいじめていた女子の目の前に落ちたのだという。
即死と診断が下されたが、血まみれの彼女がにんまりと笑い女子グルー
プを見ていたという噂がた
っ
た。
やがて、女子グルー
プの一人ひとりが精神がやんだり、交通事故にあ
っ
て重症を負うような事件が続いた。
最後の一人は「サカシマさんが来る。許してもらえない。誰も許してもらえない」という書き置きを残して失踪したらしい。
その後、数年して、同窓会が開かれる。
同窓会は数年おきに開かれるが、そのたびに大きく数が減
っ
てい
っ
たのだという。
死んだり、連絡が取れなくな
っ
たりしているのだという。
やがて、同窓会は開かれなくな
っ
た。
誰も、同窓会に来れるものなどいなくな
っ
ていたから。
サカシマさんの恨みはそれでも収まらない。サカシマさんはこの話を聞いたものに三日以内にや
っ
てくるというのだ。
一人が話すたびに、残りの三人は合点のいかない顔をする。どうも一致しているのはサカシマさんという名前と、
「変だな。俺が聞いたのはある村の話で、その村は他の村が凶作で飢饉に近い状態にな
っ
ても豊作だ
っ
たんだ
っ
て。自然と周りに食べ物を分け与えたりするようにな
っ
て、自然と周辺の村々の中心的地位にな
っ
ていたらしい。でも、ある時不思議に思
っ
た若者がその村の祭りに忍び込んだだ
っ
て。忍びこむ必要なんて本当はなか
っ
たのかもしれないけど、その村は何故か周辺の村からは嫁をとらずに、わざわざ遠くの漁師町とかから嫁をもら
っ
てんの。帰れないように。で、その祭りに忍び込んだ若者は見たんだ。どこからさら
っ
てきたかも知れぬ人間を石の祭壇に縛り付けて、出刃包丁みたいので行きたままぶつ切りにしてんの。で、どうやらサカシマさん
っ
て、山の神様みたいのに生け贄を捧げてる
っ
てのがわか
っ
たみたいなんだ。それを藩の役人に訴えでたら、村は藩の武士たちに念入に調べられて、や
っ
ぱり生け贄の実体がバレち
ゃ
っ
たらしいの。その時の、殿様がそういう異形の信仰を嫌
っ
てたみたいで、その村を焼き払
っ
たらしい。一人残らず、殺しち
ゃ
っ
たらしいのね。そしたら今度は殿様が急病で死んじ
ゃ
っ
たらしい。ただ、三日前から、「サカシマが来る」
っ
て何かを恐れてたらしい。それ以後も、定期的に人が神かくしに合うようにな
っ
たらしい。そんでも
っ
て、未だその山の神が生け贄を求めてさまよ
っ
てるんだ
っ
て言われるようにな
っ
たのよ。その村が崇めてた山神の名が、「サカシマさん」だ
っ
たらしい。で、この話を聞くと「サカシマさん」が生け贄を求めてや
っ
てくる
っ
ていう話」
結局、四人の話は一致しなか
っ
た。
ただ共通しているのは、「サカシマさん」という名と「三日以内に来る」という話だけだ
っ
た。
その時は、都市伝説なんて曖昧なもんで色んな話が混ざ
っ
て適当になるもんだな
っ
て笑い合
っ
て終わ
っ
た。
三日後に、その中の一人が突然の失踪するまでは。
数年ぶりの同窓会で残りの二人と飲んだ。
「結局、あれ
っ
てなんだ
っ
たんだろうな」
不思議そうにそう言うと、残りの二人は不思議そうに顔を見合わせている。
「そんな事話をしたのは覚えてるけど、あの時はこの三人だ
っ
たし、失踪した奴なんていないぞ」
反論してみるも、記憶は曖昧だ。
よく考えれば失踪した奴の名前も覚えていない。
そんな大事件があれば、忘れるはずもないのに。
そんな奇妙な記憶に違和感を感じながらも、二人に反論することもできずに、仕方なしに自分の記憶違いということにした。
帰
っ
てアルバムを眺めてみても、もう一人の顔を思い出すことができない。
妙な違和感に不安を覚えていると、急に携帯がな
っ
た。
増笠、と表示されている。
登録した覚えはない。
電話に出る。
「久しぶり、三日以内に会いに行くよ」
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