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てきすと怪 2015
〔 作品1 〕» 2  11 
階段の音
 投稿時刻 : 2015.07.25 22:39
 字数 : 1054
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階段の音
三和すい


 夜、ふと目が覚めた。
 寝苦しさを感じなから携帯電話で時間を確認すると、午前二時。
(まだ真夜中じないか)
 タイマーをかけていたエアコンはすでに止まていて、扇風機の音さえも聞こえない。
(暑い……)
 八月も半ば。窓を開けても入てくるのは、じとりとした暑い空気だけだ。
 寝転がたまま、枕元に置いたはずのリモコンに手を伸ばす。エアコンをつけようとし、隣に寝ている妻の様子をうかがう。
 妻は寒がりだ。私が冷房を入れるとすかさず設定温度を上げるし、寝る時は夏でもタオルケトの他に薄い毛布をかけている。
(まあ、少しくらいなら良いだろう)
 私はエアコンのスイチを入れた。
 小さな音が聞こえてきたのは、そんな時だた。

  カツン……

 どこからか、何か軽い物が当たる音が聞こえてきた。

  カツン……カツン……

 寝室の外だ。私と妻しかいない静まり返た家の中に、小さな音が響く。

  カツン……カツン……カツン……

 音は、階段の下の方から聞こえてくる。

  カツン……カツン……カツン……カツン……

 まるで足音のようなリズムで、その音はだんだんと近づいてくる。

  カツン……カツン……カツン……カツン……カツン……

(……何かが階段を上てくる?)
 暑さと眠気でぼんやりした頭でそう考えた時、

  カツン……カツン……

 音が、途切れた。
 何かが階段を上りきたのだ。
 そして、小さな物を引きずる音が、開いていたドアの隙間から寝室に駆け込み、私の枕元に一直線にやて来た。


 そいつは、ニンと鳴いた。


「何だ、ミイか」
 暗闇の中、白い猫の姿が浮かび上がる。
 ミイは口にオモチをくわえていた。赤いプラスチクの棒の先に、白い動物の毛が付いた猫じらし。どこのペトシプでも置いてあるヤツで、ミイの一番のお気に入りだた。
「遊んでほしいのか」
 確か引き出しの奥に入れていたはずだが、引張り出してここまで持て来たのだろう。
 白い毛の部分をくわえ、プラスチクの柄を引きずりながら。
 何のことはない。あれは、ミイが階段を上てくる時に、プラスチクの柄が階段の角に当たる音だたのだ。
 ホとすると同時にエアコンの涼しい風が私を包み込み、眠気でまぶたが重くなる。
「ごめんな。また明日遊ぼうな」
 ミイの頭をなでようと手を伸ばしたところで私の意識は途切れた。


 翌朝、少し迷たが、私は昨夜の出来事を妻に話した。
 思たとおり妻はとても驚いた顔をしたが、
「そうね、お盆だものね」
 少しだけ微笑み、細めた目を隣の和室に向ける。
 和室にある仏壇には、早くに亡くなた両親の位牌の横に、白い猫の写真が飾てある。
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