カラカリカロクレ
これで一週間、身体がだるい。酒を飲んでも、本を読んでも、どうにもこうにもだるさが残る。大学に行く気もおきない。だからまあ、昼間から寝るしかないのだが、病気でもないのだから、寝れば寝るほど、夜中になれば眠ることもできない。
だからこうして仕方なく、深夜にな
って、友人の遺書を読み返すことになる。友人はカラカリカロクレを追い求め、そして彼自身もカラカリカロクレになってしまった。これは事実である。
事実、と言っても、私もこの目で見たのに信じられない。だから、なおさら心にしこりが残る。そのしこりがこうして私の身体にだるさを齎している。その証拠に、私はこの友人の遺書を読んでいるとだるさが抜ける。いよいよ、私は頭を抱えることとなる。だるさと遺書は関係ない、と。
そもそも私はカラカリカロクレをきちんと知らない。ただ、友人はカラカリカロクレに私の目の前でなり、そして私に遺書を残して去ったのだから、そういえば、あの姿をカラカリカロクレだと言われれば、確かにそのようなものなのだろうという、妙な説得力がある。
しかし、ああいうわからぬ物は、私の中で想像を勝手に吸い込み、都合よく吐き出し、そうして私の中で説得のある怪物と化してしまう。友人は怪物となったのではない。
友人は、カラカリカロクレになったのだ。
しかし、その瞬間を思い出すとだるくなってくる。このだるさを解消する手段の一つが、もしカラカリカロクレを頭から消して……、いや、馬鹿な考えはやめにしよう。
身体のだるさと、カラカリカロクレとは関係しないはずだ。
しかし……、友人は死んだわけではない。友人はカラカリカロクレになったのだ。死んだわけでもないのに遺書を残して去るとはどういうことか。
遺書にはこう書かれている。
ー僕はカラカリカロクレになってしまったー
次に挿絵がある。
[※ここに挿絵]
ーその瞬間、君には僕がこう見えていたー
確かに私はそう伝えた。カラカリカロクレになる瞬間だ。そして、カラカリカロクレだと認めざるを得なかった。
ー今は解る。君は嘘つきではなかった。人間だった、疑って悪かったー
いや、私はカラカリカロクレだったはずだ。君をからかっていたんだ。
だが、あれが真のカラカリカロクレだったとすれば、私はいったい今までなんだったというのか。
自分がもう怪物にしか見えない。
友人よ、返してくれ。私の大事なカラカリカロクレを。
私をカラカリカロクレでもなく生物でもなくした君を、私は恨む。