大事な会議なはずなのに
天使長にランリインは呼ばれると席から離れ、司会席まで移動するとマイクを受け取
った。
「マイクテストー。ぱるぷんて~」
会議室にいるランリインを除く8人の出席者の顔が曇った。
「ランリイン、ふざけないでくれる?」
「アイアイ」とランリインは返事をして、プレゼンを始めた。
「では、ご判断の前に、スクリーン上の絵に注目してください」
スクリーンに絵が映った。
[※ここに挿絵]
「この絵を見て、どう思いました? 直観でいいんで。では、死神副代表のゾウカさん! お答えを!」
急に指名された黒装束姿の若い死神ゾウカは「え、え?」と慌てふためきながら言った。
「いやまあ、矢印がいまにも刺さりそうで行き場を失って悲観にくれて上を見ているように思えたけど……」
「なるほどー。次に、セクハラで捕まりやっと出所できた閻魔様!」
腹の出た閻魔様が絵をちらりとだけ見ると、思い付いたように言った。
「いやー、セクハラの習慣で収監されてしまった、なんちゃって」
「はにゃ? あー、真面目に答えてほしいのに……」
他の出席者は目を細くして閻魔様を睨んだ。
「いま、その絵の彼の気持ちが良く分かる」
閻魔様はそう言うと一つ咳払いして俯いた。
「そうですか。それでこの絵を見て、明るい気持ちになる方はいますかー?」
手をあげる者は誰もいなかった。
「いま、暗い気持ちな方ー?」
閻魔様だけが手をあげた。
「……、だるいって方ー?」
残り7人がやる気なさそうに手を上げた。
「分かりましたー。それでですねー。実はこれ心理テストでー、これで心理状態が分かるらしいですよー」
その言葉に室内がどよめき、5人の天使が目を輝かせた。
「明るい気持ちで見れたら気分が明るいそうです。で、暗い気持ちな方は気分が暗いそうです。そんで、絵に関係なくだるいって方はいま疲れていますね」
天使たちの目から光が消えた。
「疲れている方はぜひこれを機会に有給休暇を取得してくださいねー」
「ランリイン!」
「ひええ! 耳に響いたー!」
天使長の怒号に思わず耳を塞いだ。
天使長はさらに言った。
「地上人口調整会議中にふざけないでくれる!?」
ランリインが言い返した。
「でも、みなさんの気分が分かったでしょー。この空気で採決したら、人類絶滅でも手を上げますよ」
「あなたがこんな空気にしたんじゃ……」
「実施日は1000年後がいい方、手をあげてー、はーい!」
8人が手をあげた。
天使長が頭を抱えながら言った。
「もういいや。地上なんて」
会議は終わった。