てきすとぽい
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第29回 てきすとぽい杯
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マザーグースと死に水と生足
(
ゆきな
)
投稿時刻 : 2015.10.17 22:58
字数 : 667
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マザーグースと死に水と生足
ゆきな
マザー
グー
スタウンへようこそ、と書かれたその看板は、かなり朽ちていた。
その看板をくぐると、釣り堀のような場所に「こちら死に水」という立て札がある。
僕は生足でその水に浸か
っ
た。
するとどうしたことか、足が動かなくな
っ
てしま
っ
た。
そして、どこからともなく歌が聞こえてきた。
ロンドン橋落ちる 落ちる 落ちる
ロンドン橋落ちる
………………
。
なんだ? 途中で終わ
っ
たぞ、と僕は訝しんだ。
秋の午後六時、もうす
っ
かり肌寒い。
こんなふうに釣り堀のような場所で得体の知れない水に足を突
っ
込んでいては、風邪をひいてしまう。
早く帰りたい。
だいたいなんだ、マザー
グー
スタウン
っ
て。
釣り堀のような得体の知れないものしかないじ
ゃ
ないか。
金返せ。払
っ
てないけど。
すると、
ロンドン橋落ちる 落ちる 落ちる
…………
。
ああ。やめてくれ、その歌をやめてくれ。
その部分しか知らないからとい
っ
て、そこだけ無限ルー
プするのはやめてくれ。
ロンドン橋 落ちる 落ちる 落ちる
嘘だろう。エンドレスリピー
トかよ。
僕の精神状態はぎりぎりだ
っ
た。
なにせ朝からなにも食べていないのだ。
せめてそこにある水を飲みたいと思
っ
たが、足が動かなくな
っ
たということは、これはき
っ
と、飲めない水なのだろうと僕は推測した。穿ち過ぎだろうか。いや、ここは慎重になるべきだ。そう判断し、とりあえず僕は待
っ
た。なにを待
っ
ているのか自分でもわからないがとにかく待
っ
た。生足で来るのじ
ゃ
なか
っ
た、せめて靴下を履いてくるんだ
っ
た、と後悔しながら待
っ
た。
そして
――
。
――――
。
――
。
あ、
死に水
っ
て、そういうことだよ
マイ・フ
ェ
ア・レデ
ィ
。
(了)
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