第29回 てきすとぽい杯
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ある男の死
投稿時刻 : 2015.10.17 23:10
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ある男の死
三和すい


「……誰がクックロビンを殺したの?」
 思わず呟いた言葉に、後輩が「何ですか、それ?」と聞いてきた。
「確かマザーグースの一節だ。昔読んだ推理小説に、そんな言葉が出てきたのをふと思い出してな」
 答えて俺は大きくため息をつきながら、路地裏に横たわった男の死体を見つめた。
「いったい誰が殺したんだろうなぁ」
 男の本当の名前は知らない。けれど、こいつがこの辺りでは「ヒツジ」と呼ばれていることは知っていた。いつも羊の毛皮のような白いモコモコのコートを着ていたからだ。
 そのコートこそが、今回の事件の凶器だった。
 しかも、驚くべきことに、コートの羊毛を寄り合わせて作った太い毛糸で首を絞められていたのだ。
「犯人はいったい何を考えていたんだろうなぁ」
 毛糸を作り出すためにコートの丈は半分ほどになっており、ヒツジの生足があらわになっている。それを隠すように、俺はビニールシートをかけてやった。
 親しい相手ではない。話したのは数えるほどだ。
 それでも、知った相手の死は辛い。殺されたともなれば尚更だ。
 せめて死に水の代わりに好きだった酒でも飲ませてやりたいところだが、鑑識が終わっていない状態では、それも無理な話だった。
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