てきすとぽい
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第4回 てきすとぽい杯
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誰が助けるの?
(
十市 社
)
投稿時刻 : 2013.04.13 23:44
字数 : 1227
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誰が助けるの?
十市 社
※ここに挿絵
黒板にへんてこな図を書きなぐ
っ
て、先生は振り向いた。
「ここにとても大きな木があります。大きな木には五人の人たちがそれぞれ太い枝の上に家を作
っ
て、家族と一緒に住んでいます。ある日、イガグリさんが足を滑らせてしまい、枝のて
っ
ぺんからゴロゴロと転げ落ちてきました。気づいたほかの四人はそれはそれは大慌て。さあ、誰がイガグリさんの転落を阻止することができるでし
ょ
うか」
ぼくたちは知
っ
ていた。
先生が怒
っ
ていることを。
それもただ怒
っ
ているだけじ
ゃ
なくて、今年でもう先生の仕事を辞めてしまおうと思
っ
ているのだ。
だから、先生はもうどうでもよくな
っ
て、こんなふうにわけのわからない問題でぼくたちを混乱させて楽しんでいるんだ。
「先生、イガグリさん
っ
て誰ですか?」
先生はため息をつく。「右から二番目の枝に住んでいる人です。見ればわかるでし
ょ
う」
「はい」きまじめな女の子が手を上げた。「じ
ゃ
あ、水の人だと思います。一番近くに住んでるし、最初に気づくと思うから」
「水の人?」先生の目つきが鋭くなる。「それは誰のことですか」
「え、まんなかの
……
」
「タマネギさんをそんなふうに呼ぶのは許しません」
「じ
ゃ
あ、タマネギさん
……
だと思います」
「タマネギさんは軍手をしていないのに? イガグリさんのトゲトゲの体を素手で受け止められるとでも?」
「じ
ゃ
あミカヅキさん」別の女の子が答える。「ミカヅキさんなら軍手をと
っ
て戻
っ
てくる時間があ
っ
たと思います」
「カキノタネさんのことを言
っ
てるのかしら? だとしたらハズレね。カキノタネさんは出
っ
張
っ
た顎が邪魔をして足元に転が
っ
ているものを見ることができないんですよ」
「ハー
ト!」のんびり屋の男の子がのんきに声を上げた。「ハー
トは優しいから助けたあげたんだよ」
先生は首を振
っ
て却下する。「モモジリじいさんは近所で評判のイジワルじじいです」
「じ
ゃ
あもう、一番左のホシの人しかいないじ
ゃ
ん」
「残念。スター
フルー
ツさんは前日お星様になりました」
答えは出つくし、ぼくたちはお手上げで先生を見上げた。
そのとき、ぼくは思いついた。
「わか
っ
た! イガグリさんは自分で止ま
っ
たんだ! 誰にも助けてもらう必要がなか
っ
たんだよ!」
先生は今までで一番みにくいものを見る目でぼくを見た。
「さようなら、みんな。今日でお別れですが、元気で暮らしなさい」
それだけ言うと、先生は教室を出ていこうとした。
「先生、正解は?」
みんなが不満の声を上げると、扉を開けた先生はぼくたちを振り返
っ
た。
「正解は、『誰も助けられませんでした』です。みんなが先生を助けてくれなか
っ
たみたいにね。イガグリさんは足を滑らせてすぐ、枝から落ちて地面に激突していたんですよ。あなたたちの担任にな
っ
て二
ヶ
月で先生が精神を病んでしま
っ
たのと同じように。ほんとにひどい一年でした。地面に激突したまま半年以上あなたたちの面倒を見なければいけなか
っ
たのですから。さようなら、みんな。その絵を一生忘れずに覚えておくがいいわ」
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