第4回 てきすとぽい杯
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処方箋
投稿時刻 : 2013.04.15 11:22 最終更新 : 2013.04.15 14:16
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- 2013/04/15 11:22:08
処方箋
タカダノブユキ


「じゃあ、このハートは何?」

「ハートはあんただよ。」

「わたし?」

「そう。」

「…わたしの? 、、、心臓? …?」

「そうじゃないよ。」

「えっ でもハートは心臓のマークでしょ?」

「そうだけど …この場合はちょっと違うんだよ。」

「えっ でもじゃあ …何?」

「心だよ。」





ばあちゃんを見てくれた医者がくれた紙には、
木みたいなものが落描きしてあるだけだった。

ばあちゃんを見てくれる医者はうちのすぐ近所にあった。
だが、この妙な処方箋の薬は、電車で1時間以上も離れた
大陸側の町の、この店でしか扱わないらしい。

はあちゃんに「いってくれるかい?」と頼まれて、
ルルエはおつかいに来たのだった。
ばあちゃんのことは好きだし、お使いの駄賃も必ずくれる。

川沿いを大陸側に遡る深線に乗るのは、
ルルエが4歳の頃に父母と乗って以来 2度目だ。
高層ビルの路地や屋上が遊び場のルルエには
地上を走る電車に乗るというだけで既に特別で、
スレスレを駆け抜ける電柱や、
青緑の絵の具のように流れる草原や川面を飽きもせず眺めていた。

終点の駅は、くすんだ白い壁の飾り気の無い建物で、
改札の前とホームの奥に一人ずつ、
薄茶の制服に銃を持った見張りが立っていた。

駅を一歩出たこの町の様子は、ルルエの街とはまるで違う。
今出た駅舎が一番高い建物だった。
あとはみな平屋で、たまに2階らしきものやベランダのようなものが、オマケのように付いている。

舗装されていない道は広く、人通りは多かったが、町は静かだった。
駅から出た人は、それぞれの目的の場所へ黙々と向かってゆく。

ルルエも、まっすぐ薬店に向かった。
途中目を惹くものは多かったが、用心深く迷わないように来た。






薬店のおじさんは、ルルエの興味本位の質問に丁寧に答えてくれた。

  星や月、水といった記号は、何がどの程度の割合なのかを示している

  木の枝のような線は、脈に至る経路や順序を示している

「私らはそれを見て、いろんなものをちょっとずつ混ぜて、薬にするんだ。」





「…心って、どうやって薬に混ぜるの?」

ルルエは、自分が奇妙な機械に取り付けられて、
胸のあたりから何かを抽出されている図を想像して
ちょっとまゆをひそめた。

「もう入ってるんだよ。」

「えっ」

「…あんたが、ばあさんのために、こんなところまで薬をもらいにきてくれた。」

「そういうことが、既にこの薬の中に入っているんだよ。」

「・・・」






わかったような、分からないような気分で、
駅へと戻る埃っぽい道を急いだ。

改札で銃を持った見張りの顔をちらと見ると、
向こうもこちらを見て一瞬目があったが、すぐに視線を元の通り前に向けた。
ルルエとそう歳の違わなそうな、若い男だった。

帰りの電車は8割方の席が埋まっていた。
みな大きな荷物の包をかかえている。







「元は同じ。生きているものも、そうでないものも。」
薬店で聞いた言葉が頭に浮かぶ。






反対の窓から陽が差してくる。
もう3時か4時くらいだろうか。
「明るいうちに帰っておいで」、という
ばあちゃんの言葉を思い出した。
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