更新履歴
- 2013/04/15 14:16:09
- 2013/04/15 11:44:32
- 2013/04/15 11:43:27
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- 2013/04/15 11:40:51
- 2013/04/15 11:22:08

「じゃあ、このハートは何？」

「ハートはあんただよ。」

「わたし？」

「そう。」

「…わたしの？　、、、心臓？　…？」

「そうじゃないよ。」

「えっ　でもハートは心臓のマークでしょ？」

「そうだけど　…この場合はちょっと違うんだよ。」

「えっ　でもじゃあ　…何？」

「心だよ。」





医者がくれた紙には、
木のような落描きしてあるだけだった。

ばあちゃんを見てくれる医者はすぐ近所だ。
だが、この妙な処方箋の薬は、
電車で1時間以上も離れた大陸側の町の、
この店でしか扱わないらしい。

はあちゃんに頼まれて、ルルエはおつかいに来た。
ばあちゃんのことは好きだ。お使いの駄賃も必ずくれる。

大陸側に遡る深線は、
4歳の頃に父母と一緒に乗って以来、2度目だ。

高層ビルの路地や屋上が遊び場のルルエにとって、
地上を走る電車は特別だ。
スレスレを駆け抜ける電柱や、絵の具のように流れる草原や
線路と並走する川面を、飽きもせず眺めていた。

終点の駅は、
くすんだ白い壁の飾り気の無い建物で、
改札の前とホームの奥に一人ずつ、
銃を持った薄茶い制服の見張りが立っていた。

駅を一歩出てみたこの町は、
ルルエの街とはまるで違う。
今出た駅舎が一番高い建物で、
あとはみな平屋で、
たまに2階らしきものやベランダのようなものが、
オマケのように付いている。

舗装されていない道は広く、
人通りは多かったが、町は静かだった。
駅から出た人は、
それぞれの目的の場所へ黙々と向かってゆく。

ルルエも、まっすぐ薬店に向かった。
途中、目を惹くものは多かったが、用心深く迷わないように来た。






薬店のおじさんは、ルルエの興味本位の質問に丁寧に答えてくれた。

　　・星や月、水といった記号は、何がどの程度の割合なのかを示している

　　・木の枝のような線は、脈に至る経路や順序を示している


「私らはそれを見て、いろんなものをちょっとずつ混ぜて、薬にするんだ。」






「…心って、どうやって薬に混ぜるの？」

自分が奇妙な機械に取り付けられて、
胸のあたりから何かを抽出されている図を想像したルルエは
ちょっとまゆをひそめる。

「もう入ってるんだよ。」

「えっ」

「…あんたが薬をもらいにここまできてくれた。」
「そういうことが、もうこの中に入っているんだよ。」

「・・・」






わかったような、わからないような気持ちで、
駅へと戻る埃っぽい道を急いだ。

改札で、銃を持った見張りの顔をちらと見ると、
向こうもこちらを見て一瞬目があった。
ルルエとそう歳の違わない、若い男だった。

帰りの電車は8割方の席が埋まっていた。
みな大きな荷物をかかえている。







「元は同じ。生きているものも、そうでないものも。」

薬店で聞いた言葉が頭に浮かぶ。






反対の窓から陽が差してくる。
もう3時か4時くらいだろうか。

「明るいうちに帰っておいで」、という
ばあちゃんの言葉を思い出した。

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