てきすとぽいトップページへ
第32回 てきすとぽい杯
 1  10  11 «〔 作品12 〕
王国で暮らす父への手紙
 投稿時刻 : 2016.04.17 00:05 最終更新 : 2016.04.17 00:09
 字数 : 1466
〔集計対象外〕
5
投票しない
更新履歴
- 2016.04.17 00:09:40
- 2016.04.17 00:05:00
王国で暮らす父への手紙
朝比奈 和咲


 どういうわけか郵便配達を楽しんでいます。

 知らない世界へ訪れるとき、夜明け前が特に良いと私の守り霊から教わりました。今まで見てきた世界が嘘に思えるからだそうです。嘘と言ても、悪い意味ではないそうです。
 世界が寝静まることはないそうです。昼間に賑やかな様子を見せる街が、夜が深まるにつれて静寂に包まれていく様を子どもの頃から肌で感じ、海からの冷たい夜風に当たりながらあの海の向こうにどんな世界があるのだろうかと思ていました。向こう側の世界も賑やかで明るい街があて、夜になればみんな寝静まて眠りにつく。それが常識だと思ていたのですが、こちらの世界ではそんな常識、ありませんでした。
 森で暮らす妖精に、夜中になて活発に遊び回る種族がいました。昼間は眠ているわけではなく、二十四時間遊び回れる体力があるそうです。生まれてからずと眠りにつかないで生きることもできるらしいですが、夢を見ることも遊びの一つだという教えがあるらしく、疲れたら眠るそうです。
 海を渡てこの世界に流れ着き、初めて出会た彼女と友人になりました。彼女は朝早くから郵便配達の仕事をしていて、その途中で私に出会たそうです。彼女いわく、初めて会たときは海族の人魚がヒレを足にして遊びに出てきたのだろうと思ていたらしいです。流れ着いた私に住む場所がないことを気付くと、すぐに宿を用意してくれました。その後、配達を終えた彼女はすぐに宿に来て、好奇心旺盛な眼差しで私にかかてきました。猫耳を生やしたすごく元気な彼女と私はすぐに打ち解け、気が付けば彼女の仕事に私は興味を抱きました。
 彼女の仕事はこの島で唯一の郵便配達です。ただし、私の育た世界の郵便配達とは違います。二十四時間、いつでも配達できる体力がなければ務まりません。だて、前述のように、夜中に遊ぶ妖精さんもいますし、昼間に働く犬娘もいるので。
 この世界で生きていくためには働いてお金を得なければいけないので、さそく私は彼女の仕事を手伝うようになりました。この二週間、様々な時刻に島の様々な場所を訪れて、多くの彼らに会いました。みんな私のことを珍しがて話しかけてきてくれます。しばらく私の周りで長い静けさに出会えることはなさそうです。楽しいからいいのですけど。
 そんな中、今の私には夜明け前だけが静けさと出会える時間です。森も海も山も野原も、空が明るくなるとき、一瞬だけ息をひそめて明るくなた方角を見つめる隣にいた友人の表情は、やんちなときの彼女と違て、澄んだ眼差しで今までの彼女とは嘘のようでした。
 思い付くままに、近況報告でした。
 だから、私の郵便配達は彼らの時間に合わせて配達することになりました。それは彼らに比べて丈夫ではない私の身体に辛いところもあるのですが、私は不思議な彼らに会う楽しみを失うことと比べればなんてことありません。
 そういうわけで、私はこの世界でもうしばらく郵便配達を続けていきたいと思います。
 郵便配達の仕事をしているのですから、本当はこの手紙を私が父上に届けるべきだとは思うのですが、ちうどそちらに行く方がいるということなので彼女に頼むことにしました。空を飛べない私が海を越えるにも一苦労なので。
 しばらくしたらまた戻ります。それまでお互いにお元気でいましうね。暗殺者に仕留められぬよう、いつも身の回りにはお気をつけてくださいね。今の父上にはそんな心配もないでしうが。母上は相変らず忙しそうだと聞きました。お暇なときにこの手紙を見せて差し上げてください。では、ごきげんよう。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない